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地獄の黙示録のKeNのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録(1979年製作の映画)
4.2
BSプレミアムシネマの録画にて再見。

「この戦争では様々な混乱が生じている。権力 理想 古い道徳観 現実の作戦行動。だが現地人に囲まれ神と崇められるのはかなりの誘惑だろう。合理と不合理の間や善悪の間で誰の心にも葛藤がある。常に善が勝つとは限らない。時には悪が勝利し、リンカーンの言う“心の天使”を負かす。誰にも理性の限界がある。」by コーマン将軍の台詞

このコッポラの作品も初めて映画館で観た時、かなりの衝撃を受けたなぁ。ナパーム弾が落とされ燃えあがるヤシ林の映像のバックで流れるThe Doorsの「The End」、そしてロバート・デュヴァル扮するキルゴア中佐率いるアメリカ陸軍第1騎兵師団のヘリがベトコンの村を急襲するシーンで効果的に使われたワーグナーの「ワルキューレの騎行」。いずれも この作品を象徴するかのような映像と音楽の使われ方で、未だにインパクトが薄れない。

ジョゼフ・コンラッドの代表作で植民地時代の冒険小説『闇の奥』をベースにコッポラが物語の設定をベトナム戦争に脚色し直した叙事詩的な作品。ベトナム戦争に限らず常に恐怖や狂気、欺瞞、カオス、暴虐、そして死に満ちた戦争というものの本質をこれ程までに生々しく描いた作品を私は観たことがない。
名作か否かは別として、この狂気に満ちた作品はやはりコッポラにしか創れない作品であることは間違いない。
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