えそじま

地獄の黙示録のえそじまのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録(1979年製作の映画)
4.7
破壊の景色はこんなにも美しい。
権力と理想、古い道徳観と現実の作戦行動が混沌する狂気の世界。登場人物全員が狂っている。
陸軍士官学校首席、朝鮮戦線、空挺部隊で数々の叙勲、輝しい戦績を持ちながらもベトナム戦争の暗黒面に引き摺り込まれ自分の王国を築き上げたカーツ大佐。上層部にとって不都合、恥部である彼の暗殺を命じられたウィラード大尉もまた極限状態で地獄巡りを続ける中、闇の奥へと取り込まれていく。

徹底的な残虐描写と陰鬱な雰囲気の中で光っているのは究極のアホ、キルゴア中佐。サーフィンを愛してやまない彼はサーフポイント確保の為に「ワルキューレの騎行」を爆音で鳴らしながらベトコン農村を焼き尽くす。女子供も容赦しない。たった数十分の出演時間で数々の迷言と強烈な印象を残す。

※以下キルゴア中佐迷言録

「ベトコンはサーフィンしないだろ」

「全機攻撃態勢を取れ。朝日を背に突っ込んで音楽をスタートさせる。ワーグナーを鳴らすんだ。奴らは震え上がる。面白いぞ」

「ここでサーフィンをするか戦うかのどっちかだ。さあ着替えろ、援護してやる。ボードももってこい!」

「俺が安全と言ったらここは安全なんだ、何が何でもサーフィンをするぞ」

「あそこのヤシ林を100メートル掃射しろ、石器時代に戻せ」

「朝のナパームは格別だ」

「1つの丘を12時間続けて爆撃した事がある。跡には死体1つ残っていなかった。
丘全体にガソリンの匂いが立ち込めていた。実感したよ、勝利を」

「はらわたが飛び出すまで戦う勇敢な兵士には喜んで水を分けてやる。敵味方も関係ない」

「野蛮人め。人も子供も家ごとぶっ潰す」

「申し訳ない、謝る。だが俺のせいではない。波を消したのはナパームだ!もうすぐ波は戻る。ナパームのせいなんだ。20分だけ待ってくれ」

「ニュージャージー生まれは黙ってろ。お前にサーフィンの何が分かる」

「サーフィンしたいか?」
えそじま

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