アキラナウェイ

地獄の黙示録のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録(1979年製作の映画)
4.1
【恥ずかしながら初めて観ます名作シリーズ】
第47弾!

言わずと知れたフランシス・フォード・コッポラ監督の戦争映画。監督ご本人が終盤にかけて、訳がわからなくなったと公言したというこの作品をどうやって纏める事が出来るだろう。

ドアーズの「ジ・エンド」をバックに、ナパーム弾が熱帯雨林を赤く染めるオープニングからして正気じゃないし、戦地に駆り出されない事に苛立ちを隠せないウィラード(マーティン・シーン)も正気じゃない。

でも、そんな序盤がまだ可愛く思える程に、終盤にかけての狂気の終着点で見た光景は壮絶過ぎて言葉も出ない。

とにかくヤバイ。
とにかくおかしい。

1969年。ウィラード大尉は元グリーンベレー隊長のカーツ大佐(マーロン・ブランド)を暗殺せよと極秘指令を受ける。カーツは軍の命令に背き、カンボジアの奥地で現地住民を支配し、独立王国を築き上げていると言う。河川の上流を目指すウィラード。彼が其処で見たものとは—— 。

壮絶な戦地の様子も描いている。

しかし、この映画、やはり只者ではない。
戦争とは無関係に思えるものをクローズアップし、ベトナム戦争が如何に混沌としていたのかを逆説的に描き出す。

その最たる者が、キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)だろう。

戦地にあっても、高い波を求めるサーファー野郎。
頭おかしいんじゃないかって思った。

ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流しながらヘリでベトナムの村落を攻撃するキルゴア中佐。
やっぱり頭おかしいんじゃないかって思った。

サーファー野郎も
牧師の説教も
バニーガールも
子犬も。
およそ戦争と関係がない。

そんなカオスなベトナム戦線を見せられていく内に、ウィラードも我々も心の均衡を保てなくなってくる。

カーツの王国に辿り着いてからは、更に脳味噌がトロけそうになる。

ここで、ヒッピーなアメリカ人、デニス・ホッパー登場!
「民間人だよ」と言いながら、そのバックにはカーツによって処刑された死体が吊り下げられている。

頭おかしくなる!

もう、訳がわからない。いよいよ出て来たカーツは、でっぷりとした和尚さんみたいで、何やら哲学的で文学的な事を呟いているけれど、これまで戦争の渦中で疲弊し、消耗しきった脳味噌にはもう何も入ってこない…。

泥沼から顔を出したウィラード。
意を決してカーツに牛刀を斬り付けるその時の…

牛ーーー!!
儀式の牛ーーー!!
モロで殺っとるやないかーーー!!

え、え、「動物が傷付くシーンがありますが、動物は無傷です」じゃないの!?動物愛護協会とか大丈夫なの!?

頭おかしくなる!!

全編通じて、カオス!!
ベトナム戦争がどれ程狂気に満ちたものかを見せてくれるマジカル・ミステリー・ツアーの地獄の終着点は、更にカオスに満ちていた。