まつこ

悲情城市のまつこのレビュー・感想・評価

悲情城市(1989年製作の映画)
5.0
時は巡る。
春が来て冬が訪れるように、生まれては消えて、想いが繋がる。

日本統治時代の終わりから続く激動の時代を生きた、ある家族の人生を季節の移ろいを感じるように観る物語。二・二八事件が物語に影を落とす。

どのカットも美しくてため息が出た。時折流れる「赤とんぼ」をはじめとする童謡に涙腺が緩む。

九份には何度か行っているけど、撮影場所と書かれたポスターを見るたびに「早く観なきゃな」なんて思いながら観てこなかった本作。次行く時はまた違う感情が湧きそうだ。

駿の館風のお茶屋は朝鮮宿だったんだなぁ。山と海ののどかさは変わらないし、なんとなくそのままな気もするんだけど、今や観光名所でお店も人もごちゃごちゃしているもんな。

実際に誰かが生きた毎日を思うと苦しくなる。仲間うちだから言うけどとポツリと呟くあの人の言葉にやるせない気持ちでいっぱいになった。この後の運命を知っているから余計に思っちゃったんだろうな。しかも、想像したことを答え合わせをするレベルで後から再現してくれるもんだから余計に辛い。

抗えないならどうするか。
逃げ場所さえ見つからないなら、この愛を閉じ込めておきたいと私も思うのだろうか。
二人のプラトニックなやり取りが好きだった。

転生輪廻。
引き裂かれた人たちがこの世で再び愛を育めますように。
そして、この世でも引き裂かれそうになっている人たちに安寧が訪れますように。

争いは悲しみに溢れている。
まつこ

まつこ