えりーぜ

好きだ、のえりーぜのレビュー・感想・評価

好きだ、(2005年製作の映画)
2.8
いっぱいの空に浮かぶシルエット。黒い点みたいに、並んで歩く。寄り添って、離れて、近づいてはからかって、強がって。

高校時代の2人のシーンは、言うなれば清涼飲料水みたいだった。ベタベタしてない、気持ちのいい汗みたいな、爽やかな酸味みたいな。透明な青春そのものみたいだったけど、どこかくすぶって澱むような、指先にできた血だまりみたいな、暗さをもっていて。
どこまでも広い空の中で、小さな点にすぎないみたいに、例えば80年生きるとして、そのうちの1年や2年なんてわずかなのかもしれない。でもその瞬間は全力でいっぱいいっぱいで、どうしていいか分からないみたいな。
ぎゅぅっと心を絞られるみたいな、そんな想いがした。

大人になった2人は暗さに飲み込まれて、浮上できないみたい。「好きだ」ってその言葉で、あの頃と時間をつなぐ。
あの頃言えなかった言葉。でもあの時は、その言葉じゃなかったんだろう。
もどかしく苦い気持ちは、「好き」とかそんなんじゃない気がして、「好き」って言っちゃうと終わる気がして、言えなかったんだよ。


まだ何者でもない頃のあおいちゃんが可愛い。ただの、普通の女の子で、すごいな。
大人時代を演じた西島秀俊も永作博美もすごく良かったけど、今、そのままで大人時代を演じられるだろう瑛大と宮崎あおいが瞼にちらつくほど、鮮烈で自然な高校時代の2人だった。