ビクトルエリセ監督作品。
「ミツバチのささやき」をだいぶ前に観て、良さをそこまで理解できなかった以来のエリセ作品。
追憶、回想の映画として、構成がとても美しかった。自分は構成がシンプルで美しい映画がとても好きなので、本作の父と娘の交錯する思いと、過去への郷愁みたいなものが重層的に展開する構成はとても好きだった。
ただ、「ミツバチのささやき」と同じく、かなり静謐さを基調とした作品なので、前半、中盤あたりはかなりぼーっとしながら観ていた。ある意味、前半中盤は伏線とも言えるので、やや退屈さも感じた。
しかし後半のホテルでの父との会食シーンのスリリングな会話は、それらの伏線をすべて回収するような心地よさと危なっかしさがあって、とても良かった。
本作は3時間の大作として構想されていたが、プロデューサーによって前半しか作ることができなかったそうで、終盤の、面白さがどんどん加速しそうなところで、終わってしまったのが大変残念だった。
濱口竜介監督が本作をフェイバリットに挙げていたが、それも頷ける。濱口作品にも通ずるような、(特にホテルでの会食シーン)、シーンも多くあった。
追憶の映画として、美しくとても計算された映画で、とでも面白かった。ただ、まだ自分の観る目では十分に本作の魅力を楽しめなかったので、ポイントはやや低めにした。
「瞳をとじて」もつづけて観てみたいとも思った。