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バレエ・カンパニーのpikaのレビュー・感想・評価

バレエ・カンパニー(2003年製作の映画)
4.0
バレエ界をドキュメントタッチで描いたドラマって興味ないと楽しめないんじゃ?という不安を杞憂に変えるアルトマンの凄さ。リハーサルから次のカットで本番へジャンプして繰り返すので門外漢でも見やすいし、「バレエとは」みたいなものをシークエンスの積み重ねだけで多分に語っていて凄い。
企画から本番までをスピーディーに寡黙に見せていく演出が非常に好み。
嵐の中のアクシデント、怪我などの劇的な瞬間を淡々と普通の日常と同じテンションで描写していくことでバレエ界の特異性が引き立つ。血と汗が滲み、嫉妬や欲望が渦巻いて、などのベタな演出などせずとも十二分に伝わる。
全編そんな感じで説明を最小限に留めた省略演出が非常に良い。伝えないことで逆に伝わるし、アッサリしてる方が印象的だと言わんばかり。

いわゆる芸術の中でもバレエは映画や舞台以上に抽象性を表現できる媒体ではあるけど、表現者がいて初めて完成するもので、音楽よりも表現者に委ねられるものが大きいという印象を持った。そのバレエを用いて芸術というものがいかにしてできていくのかってのを見せているのが面白い。感傷的な部分を一切排除した潔さが効いてて、すべてが当たり前のごとく展開し、どんな芸術も人が生み出しているもので、それは日常の延長とばかりな姿勢が素晴らしい。親や恋人との関係、オフの団員たちなどの描写もドラマチックで意味有りげなものではなく、終始日常というものに重点を置いている点も良い。

クライマックスのショーまで門外漢に対して親切な作りになっていてありがたい。華やかでカラフルでとても楽しく、バレエなんて全然わかりません!な私でも楽しく見れた。まさに劇内の演出家の意図通り笑
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