ふき

世界侵略:ロサンゼルス決戦のふきのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ロサンゼルスの街を占拠しつつあるエイリアンに対抗すべく海兵隊員が陸上戦を繰り広げるSF戦争アクション作品。

知人に「『バトルシップ』と同じバカ映画だって。FPSが好きなら楽しいって」と言われたので、遅ればせながら家で見た。
見る前は、アメリカ軍が謎の存在と交戦した「ロサンゼルスの戦い」を題材にお話を膨らます発想を面白そうと思って致し、実際、序盤はかなりワクワクした。
突然地球のすぐそばに現れた隕石が次々に落下するカタストロフィは予算に見合わぬ派手さがあるし、様々な海兵隊員が端的に紹介されて(死亡フラグを立てて)いく導入も悪くない。爆撃を待つ地域に市民を助けに降り立った屈強な海兵隊員が、煙に包まれた街を進むシークエンスは、正体不明者の登場のサスペンスをきっちり盛り上げていて素晴らしい。そのサスペンスを最大限に活かすべく、最初の第三種接近遭遇をするのが寄る辺ない最若手の隊員一人というのも上手い。
カメラのグラグラが過剰だったり、一度前線基地に降りて分隊長の激励を聞く件がもたつくなど、多少気になるところもあるが、最初の三〇分はいいのだ。
だがいざエイリアンが出てきて戦闘になると、途端に普通の「アメリカ軍VS敵軍」になってしまう。

ネタバレ感想なので、あらすじを最後まで整理する。
第一幕:エイリアンの大規模な侵略で破壊されたロサンゼルスに、部下を死なせた過去を持つ主人公と海兵隊の分隊員として飛び込む。
第二幕:エイリアンと交戦した分隊は、犠牲を出しながらも民間人の元に辿り着くも、戦場に孤立してしまう。エイリアンの弱点を見つけ出して包囲網を突破する中で様々な悲劇に遭いつつも分隊として結束を深め、民間人をヘリで脱出させる。
第三幕:分隊の七人は反撃の糸口を探るべく戦場に残り、エイリアンの猛攻を耐えながらついにエイリアンを制御する巨大兵器に特殊武器を叩き込む。次々に停止する機械、そして「まだまだ俺たちが戦う場所がある!」エンディング。
良くも悪くもジャンル映画的な型通りの構成だ。キャラクターも類型的な人物が多く、その意味では「なにも考えないで見られる」。だが本作はそれだけで、ジャンル映画的な型に新しい要素をぶち込んだり、あるいはおかしな組み合わせ方をしたりして、本作ならではの味を足そうとしていないのだ。結局現状は、アクションシーンも平場のシーンも、どれも過去の戦争映画やSF映画で見たシーンの「小規模版」「低予算版」でしかない。
(というか史実の「ロサンゼルスの戦い」、作中で一切触れなかったように記憶しているのだが、見落としただろうか……?)

細かいところだと、第一幕で少なくない尺をかけて紹介した(死亡フラグを立てた)軍人たちが、各々の性質をろくに活かさないまま大ざっぱに退場してしまう点や、第二幕に登場する少年に関するシークエンスが要領を得ない上にのちの展開に影響しない点など、もっと掘り下げてほしい部分が散見される。エイリアンの弱点を見つけるシーンは、腹を掻っ捌いて内臓のあっちを刺し「ここじゃない」こっちを刺し「ここでもない」を繰り返して、申し訳ないが「そんだけ刺したら死ぬだろ」と笑ってしまった。見栄えの大きく変わらない人型エイリアンとの戦闘で第二幕が中だるみする割りに、第三幕のクライマックスの大規模な反撃が一五分しかないのも、CGカットの予算の都合かもしれないが、バランスの悪さを感じる。
カメラをガチャガチャ動かす撮影手法は、銃撃戦主体のアクションシーンを途中から「派手すぎて逆に単調」状態にしてまったし、平場のシーンまで映像が小刻みに揺れて素早く短いズームイン/アウトを繰り返されると、単純に見にくい。史実を出発点としたドキュメンタリー的に見せたいのかもしれないが、上下左右前後にひっきりなしに動く映像では、お話に入り込む前に「撮影の作為」を感じてしまう。私は逆効果に感じた。

ただ、クライマックスはCGを駆使した派手な見せ場でガンガン進むので、何百回と見た倒し方とはいえ結構盛り上がった。全体の構成としては短くても、ジャンル映画としてはむしろ標準的な尺とも言え、終わり方のシャープさも相まって視聴後感はそれほど悪くなかった。
そんな感じで、最初の三〇分はワクワクしたし、最後の二〇分も十分に盛り上がった。問題は真ん中だ。最初の三〇分で語った多くのキャラと要素を活かしきるなら二〇分足りず、最後の二〇分の切れ味で類型的な要素でジャンル映画に徹するなら二〇分長い。
最終的には「どっちつかずの作品」という感想に落ち着いた。
勧めてくれた知人には申し訳ないが、同じバカ映画でも「新しい試みもあるし映像も見やすいし、実はちゃんと作られているバカ映画」である『バトルシップ』とは比べられない。

余談だけど、このお話、FPS(自己視点型シューティングゲーム)で遊んだら、たぶんもっとずっと楽しめたと思う。
自分で銃を撃ってエイリアンを殺し、ヘリを守りバスを守り、定期的に飛んでくる味方のミサイルを特殊兵装で敵拠点に誘導して倒す。まあこれだってゲームの世界ではよくある展開だけど、「普通のFPSだけど、まあ楽しかったよ」レベルにはなったんじゃないかなあ。
ふき

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