滝和也

扉の陰の秘密の滝和也のレビュー・感想・評価

扉の陰の秘密(1948年製作の映画)
3.8
よく知らない夫

一番近くの他人の
恐怖を妻の視点から
描いた巨匠ラングの
サスペンスの佳作。

邸宅内に絞り込まれた
舞台を不気味な世界へと。

「扉の陰の秘密」

奇才フリッツ・ラング監督がアクション性を廃し、妻である女性の心理をモノローグとして使いながら、夫への疑念を描く心理サスペンス。

年の離れた兄の急逝により遺産を受け継いだシリア。知人とメキシコ旅行に行くと出会ったのは建築家のマーク。彼に通じるモノを何故か感じた彼女は結婚を早々としてしまう。だが…彼には同居する姉…前妻との子供もいた。彼の態度も怪しくなり…更に…恐ろしい秘密が…。

敬愛する女性人気レビュアーの3人から絶賛されていましたこの作品。美女からの人気が高いのは何となくわかりますね(^^) 女性のモノローグを中心に構成されていて、愛深き女性の心理、愛情や恐怖を巧みに描いています。また演じるジョーン・ベネットは透き通る様な美女ですからね。登場人物も女性が多くて、サイコサスペンスとしての根幹を担います。

また前半から何かおかしいと少しづつ少しづつ恐怖を表現し、ラストの20分で一気に爆発する様な展開の妙。ラストは何処に収束するのかわからない面白さ。何段構えになってるんだと…。

ラングの演出は狭い世界の中でも光と陰、そして音を巧みに使い恐怖感を盛り上げていきます。シオドマクのらせん階段を思わせる巧みさ。同じドイツ出身ガリガリ博士を生んだドイツ表現主義の後継者たち(^^) 何より素晴らしかったのはシリアが逃げる霧の森の全て。その世界観、カット割、霧の中から現れる影の構図と正に完璧。現代ホラー映画に繋がってますよね(^^) これ戦後すぐの作品ですからね。やはり凄い。

まぁ、知り合ってすぐ結婚したら、そりゃあいかんですよ(笑)相手をよく知らないってのは…。

夫婦って一番近い他人な訳です。血は繋がってませんし、ずっと家族ではなかったですからね。怖い存在にいつなるかわからないのかもしれません…。

因みに家は子供がなく、妻と二人暮らしでお互いしか家にいるわけないのですが…妻は私が後から声をかけたり、現れたりするとすげぇビックリしてお怒りになります(T_T)…。どんだけ嫌われてるのか警戒されているのか…。そうか俺ってサイコだったのか…(T_T)
滝和也

滝和也