よしまる

マーニーのよしまるのレビュー・感想・評価

マーニー(1964年製作の映画)
3.3
 月イチでお届けしているヒッチコックレビュー、今回は後期のスリラー作品「マーニー」。

 前作の「鳥」で華々しくデビューしたティッピ・ヘドレンを連続起用。
犯罪者を主役にした物語であることからすでに王妃だったグレース・ケリーに断られたためと伝えられており、それがどういう因果関係を生んだかはわからないけれど、とにかくヒッチコックはへドレンに執拗にセクハラを続け、ついには第三者を介してしかコミュニケーションを取ることをゆるされないところまで行き着いた。
 そんな関係で良作が撮れるはずもなく、背景を知らずとも見ていて切れの悪い、歯がゆい演出が目立つ。

 詐欺や盗みの常習犯であるへドレンに惚れるのは被害にあった会社社長のショーン・コネリー。
 ある事件によるトラウマから男性恐怖症となっているへドレン、その異常な態度になぜか身も心も捧げんとするコネリーという図式はどこにも感情移入する場所が与えられず、スリルを楽しむというほどの事件性もない。
 まったくイカれたへドレンを愛でることができるか、それがこの映画の楽しみ方と言ってしまってもよいかもしれない。

 ところどころに面白いカメラワークもあるし、会話のテンポそのものは悪くない。バーナード・ハーマンのスコアも相変わらず絶妙だし、へドレンの母親やコネリーの妹など演技派による脇役の存在感は素晴らしい。

 つまるところ、「あのヒッチコック」という肩書があればこその駄作であり、犯罪者で頭のおかしい女性が主人公というちょっと異色のスリラーとして見ればじゅうぶんに楽しめる。

 ラストの方に重要人物で出てくるブルース・ダーンはクレジットを得た映画としてはこれが初出演。ちなみにティッピ・へドレンの娘はメラニー・グリフィス、その娘はダコタ・ジョンソンなので、3世代に渡って共演していると知ってびっくり。このあとヒッチコックの遺作「ファミリー・プロット」では主演をつとめているけれど、そっちも未見なので楽しみ♪