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マーニーのRのレビュー・感想・評価

マーニー(1964年製作の映画)
4.5
3回目の鑑賞です。すばらしい映画です。映画を見る喜びをいっぱい浴びせてくれる。黒髪の女が黄色いハンドバッグを持って駅のホームを歩いて遠ざかって行く冒頭のショット。ただそれだけで、まだ何にも起こってないのに、なんだ?なんだ?と一気に興味ひかれるこの不思議。注目を惹き付けるのが天才の技ですわ。主人公のマーニーは面接受けて企業に雇われては、ちょこっと働いたあとそこの金庫から金を盗んで逃亡を繰り返す謎の美女。そんなマーニーの実態を知るにおよび、心ひかれ、知らぬふりして自分の会社に雇い、わざと金を盗ませて、彼女を捕獲するマーク。彼は、手なづけるのが難しい動物を調教し、おとなしく従わせるのが大好きな、動物学者でもあるのだ。彼にとってマーニーは格好のターゲットだった。過去の盗みの罪を白状させ、それをダシにマーニーを無理矢理自分と結婚させ、自分の世界から出さないようにして、少しずつ調教しようとするのだが、だんだんとマーニーが精神を病んでいること、そして、それが彼女の不遇の過去となんらかの関係があることが明らかになっていく…という話。ひとつひとつのショットがほんとに驚異的な巧みさで、人や物の物理的位置関係のみならず、人物の関係や思惑などなどまで、言葉による説明なく一瞬で分からせるとことか、大枠の状況説明のワンショットがゆーーーっくりズームインしていって一気にサスペンスの渦中へ巻き込むとことか、もう神技としか言いようがない。特にスゴイのは、やっぱりかの有名な、マーニーがマークの会社で働いてる様子を見せる日常シーンと、実際の金庫破りのシーンかなー。あと、マークの義理の妹が出てくるシーンもいい! この女のビッチーなキャラが、とりわけヒッチコックらしい演出にピッタリな気がする。あとマーニーの悲惨なおかんも良い味出しまくり。個人的に主演のティッピヘドレンあんま好きじゃないんやけど、お相手のショーンコネリーはとにかくスゴイ! キャラ設定的にちょっといろいろ盛りすぎて無理があるところを、まったく違和感なくスマートに見せてるのは、ショーンコネリーの驚異的な魅力あってのものだろう。男的・獣的なセックスの象徴みたいな見た目なのに、どこまでもジェントルマン、その実、中身は調教師。エロ過ぎるやろそれは。終盤は、心をかき乱す圧倒的な心理ドラマを、サスペンスフルに描くヒッチコックの手腕が大炸裂! まさか、ヒッチコックの映画で涙が出そうになるほど感動するとは…。シビれた! ヒッチ作品のなかではあまり人気のない一作のようだが、断固擁護派です。ティッピヘドレンの盗癖心理ドラマとして見るより、ショーンコネリーの調教映画として見た方が面白いかもしれません。調教されたい方は、是非、見るべきです。
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