天然パーマのとおる

希望の国の天然パーマのとおるのレビュー・感想・評価

希望の国(2012年製作の映画)
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悪い意味で園子温らしい作品だった。
架空の地域を舞台にしているが、どう考えても地名から何まで福島県をモデルにしている。地域産品や細かい市町村名に至るまで福島県を意識している。
架空の地域という扱いにすることで、検証も調査もしていないエンターテイメントで描いている部分の逃げ道を作っているようにしか見えない。東日本大震災の事実と大きく異なった誇張表現であっても架空の地域を描いているからで済む。だからこそ描いているものが嘘くさい。私は福島県沿岸部に住んでいる。だからこそリアリティがないことも、製作陣が被災地の実状も見ていないこともひしひし伝わってくる。壊れた建物などで表層は再現しながらも、根幹は狂った人間を描いて視聴者を楽しませたいだけのファンタジー作品。
多くの人が苦しんだ大きな事象をエンターテイメントにすることに嫌悪感を感じる。

冷たい熱帯魚も実際の事件をモデルに、脚色してエンターテイメント作品にしていた。事件そのものへの想いよりも、エログロ作品を作る題材にちょうど良かっただけのように感じられた。自殺サークルも自殺という大きなテーマをキャッチーな要素の一つとして捉え、中身のない映画だった。
話題性のある題材でふろしきを広げるだけ広げる。
園子温監督は話題性のあるウケるエンターテイメント作品を作ることに関しては天才だと思うけれど、テーマそのものへの関心はない人なんだろうなと思う。今回は原発がそのウケるテーマとして選ばれただけ。