SatoshiFujiwara

クール・ワールドのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

クール・ワールド(1963年製作の映画)
3.4
なるほど演説者の顔を真正面からクローズアップで捉えつつの「白人は悪魔だ!黒人こそが人類の起源だ!」というマニフェストがブチ上げられる冒頭シーンは強烈な印象を残すが、その感興が持続するのは遠足なのか社会科見学なのか、先生がやんちゃ坊主どもをバスに乗せてニューヨーク巡りをするところくらいまで、その後は登場人物の存外単純と思えるエモーションの発露ぶりであるとか、引かずに押しまくる暑苦しい演出だとかで個人的にはさほど乗れず…。

但しマル・ウォルドロンのスコア及び演奏(ディジー・ガレスピーやアート・テイラー、ユセフ・ラティーフも参加)は文句なし、まあそれとて全編に流し過ぎだとは思うのだが。舞台はニューヨーク、主要登場人物は黒人、テーマは人種差別や疎外、使われる音楽はジャズ、という点で本作を観る人は誰だってこの4年前に撮られたカサヴェテスの『アメリカの影』を思い出すだろう(シャーリー・クラークやプロデュースしたワイズマンだって『アメリカ〜』が念頭になかった訳はあるまい)。しかしインパクトはあれに遠く及ばず、か。
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