映画漬廃人伊波興一

白い花びらの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

白い花びら(1998年製作の映画)
3.9
カウリスマキは自身に未だに宿る「悲劇の不随」の根絶を図るべくこの作品と向き合っていたのではないでしょうか?アキ・カウリスマキ「白い花びら」

傑作「浮き雲」とこれまた傑作「過去のない男」の間に位置する「白い花びら」もやはり、サカリ・クオウスマネンの冴えない農夫の名前が原題であったり、アンドレ・ウィルムスがどう贔屓目に見ても美女とは呼べないカティ・オウティネンに一目ぼれしたり、彼女が娼婦にさせられたり、身ごもらされたり、クオスマネンが銃弾で致命傷を受けながらも復讐を果たす為にゾンビの如く執拗に斧を振りかざしてウィルムスを追い詰めたり、本来なら夢いっぱいで収束せねばならないモノクロサイレントを救いようのない結末で締めくくる暴挙ぶり。
ですがやはりこの作品は悲劇ではないのです。むしろ(悲劇の不髄)の根絶を図る映画なんです。
カウリスマキは本作を笑い飛ばして観てくれたら嬉しい、と思ってる筈です。