コーカサス

男はつらいよ 寅次郎忘れな草のコーカサスのレビュー・感想・評価

4.7
愛を持つ上流階級の男 第11作。

運命の女性リリー初登場。
「お兄ちゃんは誰にもない素晴らしい物を持っている…。つまりさ、愛よ。人を愛する気持ちよ」
そうさくらが云うように、愛の上流階級である寅さんには、いつだって忘れな草の花言葉のような“真実の愛”がある。

そして、改めて思う。
寅にとってリリーは運命の人なのだと。
「リリーも俺と同じ旅人よ」
そう、ふたりは似ているのだ。
あまりにも似すぎた故、このふたりの旅人は、あぶくの如く泣き別れてしまう。

しかし「天に軌道のあるごとく人それぞれに運命というものを持っております」寅自身が啖呵売でよく使う口上は、己れの運命をもよく知っていて、その後ふたりを結んだ運命の赤い糸は、永く永く続いていくのである。

“ピアノ騒動” から始まり、北海道で肉体労働をしようと酪農農家で手伝いをするも3日でダウン、さくらに迎えに来てもらったり、笑いと涙のさじ加減も絶妙、シリーズ屈指の名作である事は間違いない。

ここから私とマムちゃんの思い出話を。

「俺も車寅次郎(車とラジオ)だからね」以前、公開ラジオ番組でお会いした時、そう教えてくれた“ラジオ界の寅さん”ことマムちゃん(毒蝮三太夫) が、リリーの旦那役として登場している。
これは、寅さんファンでありマムちゃんファンである私にとって、とても嬉しいことだ。

思えば縁だよ。
『男はつらいよ』第1作目の初公開が1969年8月27日に対し、今も続くTBSラジオ『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』の初放送も1969月10月6日と“同い年”なのだから!(因みに前日の1969年10月5日からは、あの『サザエさん』がスタートしている!)

“江戸弁(東京弁)”の歯切れ良さ。
これは渥美さんとマムちゃん共通の魅力である。

「浅丘さんに離縁されちゃってさ。もう少し長く続けば良かったのになぁ…」
ちょっぴり寂しそうに話してくれたアラシ隊員ことマムちゃんの、それでもどこか嬉しげな笑顔が今も忘れられない。

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1996/12/7