コーカサス

男はつらいよ 寅次郎夢枕のコーカサスのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 寅次郎夢枕(1972年製作の映画)
4.0
恋すれば 針の落ちる音さえ 千里先まで 第10作。

のちの第35作を思わせる寅さんからインテリ大学助教授・岡倉 (米倉) への恋の指南役ぶりが実に可笑しい。

「いいかい、恋なんてそんな生易しいもんじゃないぞ。(中略)「ねえ、寅ちゃん、私のために死んでくれる?」と言われたら「ありがとう」と言ってすぐ死ねる。それが恋というもんじゃないだろうか」
いつもながら感動する寅さんの恋愛塾も何ひとつ濁りなく冴え渡る。
そして、今回はなんと “惚れらる側”という絶好のチャンス到来だ。
しかし…寅さん、逃げるのである。
どうやらこの男には誰も越えてはならない“一線”があるのかもしれない。
亀戸天神のデートで、欄干をなぞる千代(八千草)の指先が何とも切なく美しい。

また、田中絹代と寅の絡みも秀逸で、夕焼けを背景に別れを惜しむふたりの挨拶は、とても上品で忘れ難い名場面だ。

しかし、お千代坊とさくらを「でかラッキョとちびラッキョ」とからかったり、岡倉先生に頼まれ東大へ行き、戻るや否や、なぜか?早稲田大学校歌を口ずさむかと思えばサビ部分を♪とらや、とらやと替え歌にしてしまう辺りは、さすが天才・渥美清、絶好調である。

ポスター(DVDジャケット)がシリーズ中一番素晴らしい。

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