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禁じられた遊びのくりふのレビュー・感想・評価

禁じられた遊び(1952年製作の映画)
3.5
【戦圧に心つぶされる子供たち】

アマプラにて。反戦映画の名作的位置づけですね。子供のころ、家族で見て、皆でしんみりした記憶があります。

再見すると、記憶よりはドライな仕上がり。邦画あるあるなお涙頂戴演出などやらかさず、主演は子供ながら、ずっと大人の映画だったのだなと。監督はルネ・クレマンだったのか。

1940年、ドイツ軍のフランス侵攻でパリから逃げ出す人々に、容赦なく降り注ぐ機銃掃射。地獄でカオスの中、5歳のポーレットも一人、と一匹になってしまう…。

戦禍に右往左往する人々以上に、動物たちは当て所なく彷徨うことになるが、それをガイドのように使うのが巧い。ポーレットは、“戦争を知らない”馬に導かれて、命をつなぐ。

田舎にまでは…まだ?…ナチスはやって来ないようだが、ポーレットが導かれた農家にも、戦争の大気汚染は及んでいる。…ことが段々、わかってくる。という、おそろしさ。

農家の少年ミシェルとポーレットは、無邪気だが危険な遊びにふけるようになるが、そうなったのは、戦争で大量生産される死が後押ししたから…と、思わせてしまう空気感。

公開当時は、終戦から数えても7年。現地の人々は、まだ癒えていなかったと思いますが、そのプレッシャー…いわば“戦圧”とでも言うべきものが、映画では、子どもたちを圧し潰そうとしている…ように感じてしまう。

子どもたちどころか制作者も、この“戦圧”をフィルムに記録したつもりはなかったのかもしれませんが。

今回、見直して、そこが一番おそろしく、しかし残すべき傷跡だと思いました。

農家でも意外な死者が出ますが…これも“戦圧”の玉突きから起こったコトだしね。

ポーレット役ブリジット・フォッセーは、よく活かしましたね。パリの子。農家ではお人形さんのようにも愛されるが、結局は最後まで、死が生んだ穴は埋まることがない…。

それにしても、十字架って単なるモノで、やっぱり誰も救われないんだね。

<2023.3.6記>
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