ゆいはん

禁じられた遊びのゆいはんのレビュー・感想・評価

禁じられた遊び(1952年製作の映画)
4.0
予算不足でオーケストラをつけれず、ギター一本での演奏になったとのことだったが、むしろ良かった。今の映画は何かとBGMを付けるけれど、あれくらいでいいんじゃないかな。BGMが無い時の自然音がまたとても良かった。

あと、随所随所で共感するシーンがあれども、総括してこの映画がなんだったのかはわからない。「反戦映画」と位置付けられていて、その側面も持っているのかもしれないけれども、それはこの映画のほんの一部分だけのような気がする。もっと大きな人間そのものを示すような作品だった気がする。戦争だから、ポーレットのあの無垢さが作られたのではなくて、あれは子供特有の無垢さだったと思うし、現代の子供とて死をあの年齢では理解できないし、子供の頃に蟻を踏みつけて遊んだような感覚と一緒なんだと思う。戦争だから生き死にの感覚が鈍ったわけではないと思う。もちろん、大人たちの死に対する感覚の鈍りも気になったけれど、それが反戦を示していたかと言うとそうでもない気がした。「白いリボン」でもそうであったように、あの時代の死生観の感覚はもっと希薄だと思う。そして何よりラストが素晴らしかったです。多分ポーレットに明るい未来はないんだけれども、あの雑踏の中に消えていくシーンは、あらゆる時代の人々が大きなそれに飲み込まれていく様のようで、象徴的だった。
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