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デリカテッセンのSUIのネタバレレビュー・内容・結末

デリカテッセン(1991年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

肉屋が求職者を募ってそれを捌いてはアパートの住民に売りつけ、住人もそれが人肉と承知のうえで買い求める。
そのアパートに管理人として雇われた元ピエロのルイゾンが、人肉として捌かれようとするまでが描かれている。

とまあ、食糧難に陥った近未来のパリでの、人肉食を題材としたディストピアもの。と聞けば、果てはホラーかサスペンスと思いがちだが、そんなことは全くない。
前半のほのぼの感と後半のドタバタカオスでハチャメチャ展開がコミカルに描かれていて、恐怖を覚えるどころかナンセンスなユーモアに舌を巻くほどである。
そして、トログロ団という反政府地下組織(?)が出てくることで急展開を迎え、気づけば手に汗握って作品世界に引きこれている。

布団叩きや工場の単純作業がベッドのお楽しみの軋み音につられて、いつのまにかセッションみたいになってるところや、ハワイアンのリズムに軋みを合わせるなど、これといった意味のない小ネタが意外に楽しい。
それでいて、いたずら兄弟の釣りとかオーストラリア土産のナイフ(ブーメラン)など、一見すると無意味なように見える他愛のないエピソードが後に活きてくる。
無意味なエピソードと思っていたことが後の布石となり、意味深な描写がただの小ネタだったりする。
今作はブラックでナンセンスなコメディーに目を奪われがちだけど、しっかり練り込まれ計算され尽くされた作りにこそ着目したい。

更には、近未来という設定でありながら、舞台背景や衣裳はレトロな雰囲気を醸し、作品の世界感を際立たせている。

設定、構成、展開、演出、美術、映像、キャラクター、etc…と、とにかくセンスの塊のような作品。

これは物凄くツボだった。監督のジャン・ピエール・ジュネの別の作品も見たくなった。
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