おもしろい、とにかくおもしろい。
「博士の異常な愛情」で政治家に焦点を当てていたのが、今作では宇宙規模、そして時代を超えた人類への嘲笑になっている。
人間の滑稽さを称え、煽りまくる音楽。
耳にするたびに笑いが込み上げてきた。
ずっと昔、まだサルのような人間だった時代。
その頃から集団生活をし、グループの敵対(資源をめぐる争い)があった。仲間を見殺しにする精神、そして未知の物体への恐れと興味。
謎の物体からヒントを得た人類は狩猟に成功。
骨という武器を手に、二本足で立ちあがり、敵を叩き殺す。
私たちの先祖はこうやって学び、進化していく。
ここで、その骨を宙に投げ、それが宇宙に浮かぶ衛星と重なるカット。ああ、なんて皮肉なんだろう。すごい。
月に向かった現代人は、あのサルのような先祖と同じ発見をした。最先端の科学を用いても謎が明かされない未知のそれに近づくとき、私たちは400万年前と同じ感覚を味わう。
しかし、あの時の先祖は未知のものからの学びがあった。
それがどうだ。
現代人はただ整列し、カメラを構えてハイチーズ。
進化、進化。新しいものを追い求めるほど馬鹿になる。
木星に向かう宇宙船は人工知能コンピューターHALを搭載。
今回の計画に疑問を抱くHAL。
回線を切られそうになった彼は乗組員一人を宇宙へポン。
それを船長が助けに向かうが、結局彼もHALに締め出され、助け出した乗組員を再び宇宙へポン。
このあたりの人間の矛盾というか、やっぱり最後は自分のことしか考えない、この描き方がすごくいい。
人間はただ歴史を繰り返しているにすぎない。
老人から赤ん坊が生まれ、そしてまた死んでいく。
個人的に好きだったのは、
HALの赤い目より怖かったこの何気ない一言。
宇宙に来たパパが娘に電話。
「誕生日に欲しいもの、あるかい?何でも言ってごらん」
「う~ん、おサルさん」
モジモジしながら言われても、さすがにゾッとするよ。