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2001年宇宙の旅のQIのレビュー・感想・評価

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)
5.0
2021/7/18追記
【午前十時の映画祭 その4】

およそ3年ぶりのスクリーン鑑賞。

何度観てもその感動が失われることのない、これからもオールタイム・ベストであり続ける作品。

そして今回の鑑賞で少々感じたこと。

「入場曲」「間奏曲」「退場曲」は場内の照明をつけることなく、映像が黒味のまま映写されましたが、キューブリックが意図した形での上映でも良かったのではないかと思いました。

カットされないだけマシですが…

こだわりすぎでしょうか😅

−以下初回レビュー−

【殿堂入り作品シリーズ その2】

初めてこの作品を見たのは1968年の初公開時から10年後の1978年のリバイバル公開。
SW/ep4を観て衝撃を受けたわずか3ヶ月後のこと。

SWとは全く違う世界観とアプローチ方法にかなり戸惑いましたが、これはとんでもないものを見てしまったという感覚でした。

その後、何度もリバイバル上映がされましたが、その究極が2018年にクリストファー・ノーランが監修したアンレストア版の上映。
オリジナルフィルムから一切デジタル処理を施さず現像した初回公開時の状態をそのまま再現した70mmフィルムでの上映でした。

東京の国立アーカイブで上映されたのですが、チケットは販売と同時に完売し、残念ながら鑑賞できず😢

その後一部の劇場で行われたIMAX化70mmを鑑賞しましたが、とても50年前の作品とは思えない、その特撮と映像レベルの高さにあらためて感動しました。

この作品のもとになっているのは、アーサー・C・クラークのたった8ページの短編小説『前哨』

この小説をベースにキューブリックとクラークはアイデアを出し合い、映画と小説が平行して作られていったのです。

この作品は3つのチャプターから構成されています。

そしてその全てのチャプターに共通して現れるのが“モノリス”と呼ばれる黒い板状の物体。
これがこの作品のテーマである“神”の象徴であり、人類の進化を促していきます。

〈THE DAWN OF MAN〉
極上の特撮技術を堪能

“ツァラトゥストラはかく語りき”をバックに類人猿が骨を空に放り上げるとそれがそのまま宇宙船にオーバーラップするというシーンは、この作品で最も有名。

後半は月面基地への宇宙旅行が描かれますが、その素晴らしい特撮技術が味わえる、この作品の一番の見所。

単に空想の未来を描くだけでなく、宇宙船がPAN AMだったり、地球へのテレビ電話がクレジット払いだったりするのも、ちょっとしたリアリティーを感じさせます。

〈JUPITER MISSION〉
極上のホラーを堪能

このチャプターの前半では長い宇宙旅行をする宇宙飛行士の孤独が描かれますが、これが後半のホラー度をより高める効果をもたらしています。

この作品を見ながら睡魔に襲われる人たちは、このプロットが多いかも(笑)

〈JUPITER AND BEYOND THE INFINTE〉
極上のキューブリックワールドを堪能

このチャプターが、この作品が難解で哲学的というレッテルを貼られた原因になっています。

ただ、ここでの映像表現と様式美はキューブリックの真骨頂!

ハマる人はここでキューブリックの虜になるでしょう。

自分も初見の際には正直この作品の素晴らしさを十分理解できませんでした。
ただ、その後何度も繰り返し見直すことで、じわじわと評価が高まっていったのですが、それはクラークの小説を読んだことも大きな理由かもしれません。

クラークの小説はその後も“宇宙の旅シリーズ”として『2010年…』(これは映画化もされた)、『2061年…』『3001年…』と続いていきます。

この作品を楽しむためには、これらの小説を読まれることを是非ともお薦めします。

そしてキューブリックの映像への異常なこだわりをリスペクトし、その実践を試みているのがノーラン監督だと思っています。
先ほど紹介した、アンレストア版の監修もそのあらわれ。

9月公開の『TENET』がとても楽しみです!

最後に1978年鑑賞時に買ったパンフレットに掲載されていた、この作品に対するジョージ・ルーカスのコメントを紹介させていただきます。

『キューブリックは究極的なSF映画を作った。そしてどんな人でもこれ以上の映画を製作することは困難であろう。技術的に比較することはできるが、私は『2001年宇宙の旅』がはるかに優れていると思う』
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