さききち

式日-SHIKI-JITSU-のさききちのレビュー・感想・評価

式日-SHIKI-JITSU-(2000年製作の映画)
3.7
-明日は何の日か知ってる?
来る日も来る日も、彼女は何度もそう問いかける。

嫌なことからの逃避と妄想。
世界を切り取り、自分好みに編集する、映像製作。
いずれも現実から目をそらすこと。

他人との距離。傷つくことへの畏怖。
過剰な自己防衛。
孤独になりたいけど、なりたくない。

カントクと「彼女」。
2人の痛みや喜びが身に染みるほどわかる。映画を観ていると、稀に、「これは自分の映画だ」と思う瞬間がある。
境遇は違えど、心象風景的に。
この映画はそんな映画。
観終わってから、ずっと茫然としている。

自分の世界。好きなものしかない自分の世界。秘密の部屋の中は、狂おしく美しくも退廃的。時に暖かく、時に無機質、時にvividな生命力に溢れ、時におどろおどろしい。波打つ人生の、日々の気持ちの、胎動のよう。

カントクと彼女のハンディカム映像は、平野勝之の『わくわく不倫旅行』の微笑ましくも胸が痛くなる関係性から、『監督失格』の慟哭をも想起させる。カンパニー松尾のセルフドキュメントが持つ赤裸々かつエモーショナルな映像への強烈なリファレンス。
低評価の方も多いようだが、こう言った映像群に今迄触れてきたかでも感じ方が変わるのかも。
多少ナレーションが説明的ではあるが、俺はアリ。

そして、映像と照明が綺麗すぎて、映画がへの気持ちが止まらない。
止まらない、この気持ちは何だろう。
さききち

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