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エストラパード街のpikaのレビュー・感想・評価

エストラパード街(1952年製作の映画)
4.5
開始2秒でもう面白い。可愛らしく愛おしいアンヌ・ヴェルノン。彼女の表情と姿を愛でてるだけで余りある幸福な時間。映画の中で人物たちが豪勢な料理を食べているけどベッケルの映画が贅沢だよとか思っちまう。
ただ昼飯食べてるだけなのになんて面白いんだろう。あんなに愛おしんでいた旦那が浮気したとなるとパッパと住むところと仕事の目処をつけて去っていく潔さ。危ういダニエル・ジェランに職場のオーナーなど純真過ぎてハラハラしまくるがベタながらも不安そっちのけな方向へと進んでいくから良い驚き。
窓からカメラがズームアウトする流れや階段とドアの使い方など見せ方が色とりどりでめちゃ楽しい。
最後の最後までどうなるのかわからない。行っては戻りの繰り返しでしつこすぎるキライもあるが前半から中盤の流れが完璧過ぎるので全然オッケー。

最後まで可愛らしいアンヌ・ヴェルノンに妻を疎んじながら手放せずオロオロしまくるルイ・ジュールダン、キモくて怖いキャラなのに圧倒的な存在感と魅力を放ちまくるダニエル・ジェランと、ベッケルの映画はキャラクターたちが生き生きと、彼らの存在が一番の魅力とでも言うように輝いている。
演出の豊かさと画面の気持ちよさ、役者たちのふんだんな魅力にストーリーなんぞどうでもよくなる。むしろありふれたシンプルな話の方がそれらの要素が映え、ストレートに映画の快楽を味わえるのか。

使用人のマダムのキャラが良い。ソワソワする夫婦の良い緩衝材になってて空気が整う。
愛はあっても許せない、結局はおあいこに落ち着くところがすげー生々しい。
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