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キッズ・オールライトのniのレビュー・感想・評価

キッズ・オールライト(2010年製作の映画)
4.8
女性ふたりの夫婦と、その子供たちというひとつの家庭の崩壊と再生についての映画。
家族のあり方について、この映画を通して改めて色々と考えることがありました。是非1度は観て欲しい作品です✨

題材が素晴らしい上、夫婦が女性2人というマジョリティではない家族構成をいい意味で特別なものにせずに、ごく普通のひとつの家庭として描いていたのが本当に素晴らしいなと感じた。この作品が作られたのが10年前だということを考えると、余計に素晴らしさを感じる。10年という長さ、15歳の私が言うことでもないかもしれないが、普通であれば長いとは感じない年月だ。だが、LGBTQを扱った映画の歴史というものを考えれば、この映画はすごく先進的なものに思える。全体的には軽いシーンだけではなくて、観ていて辛くなってしまうシーンもあったのに、重くならずに観られるような作りになっていたため、観やすかった。そして全体を通してすごくリアリティを感じる作品だった。

軽いタッチながら、“家族とは何なのか” ということについてひしひしと考えさせられる作品だった。この映画を通して、家族にとっては、血の繋がりよりも、実際に共にした年月や愛の方が大事であるなと再び思った。これは養子についても言えることだと思う。1度は崩壊寸前までいった家庭の再生は、たとえ血の繋がりがない子供がいてもとても強いものだった。

と同時に、日本の「家族観」というものの狭さを感じた。私は日本で生まれて、日本で育ってきたので、第三者から精子の提供を受けて生まれたレズビアンカップルの子供に出会ったこともなければ、ゲイカップルの元に育った子供に出会ったこともないし、兄弟に養子がいるという家庭(海外ではよく聞くケースだと思うけれど)にも出会ったことはない。(もちろんこれらは一般的にマジョリティと言われない家族の一部であり、もっともっと多様性があると思う。)
日本ではやはりまだ家父長制が強いと感じる。最近それを改めて感じたのは(最近ではないかもしれないが…)1人10万円の給付金が給付される際、家庭主、つまり大概の場合、父親の口座にその家族全員分の給付金が振り込まれるということだった。円満な家庭ならそれで何の問題もなく、良いかもしれないが、例えば、事情があって父親から離れて暮らしている家庭だったらどうだろうか。給付金を受け取れず、母子が困ることは容易に想像がつくと思う。実際このことをテレビで以前に見て本当に日本って時代遅れで、対処しきれていない問題が多すぎるなと悲しくなってしまった。勿論日本に限らず、このような「古くからの価値観」にとらわれている国は他にも沢山あると思う。少しでもそういう国が早く減って欲しいと感じた。
また、そもそも日本では同性婚そのものが認められていない。つい先日、札幌地裁で同性婚を禁止するのは違憲という判決が出たけれど、それでもまだ日本で同性婚が法制化されるのはまだまだ先のように感じる。(もちろんこの判決自体は素晴らしいと思います) そして夫婦別姓すら未だに認められていない。もっと家族のあり方というものについて、多様性を認めて欲しいと、改めて強く思いました。

日本の現状について個人的な不満が多くて、書きたいことがたくさんあって、ここまで本編とそれた話を長々としてしまいましたが、なぜ満点ではないかというと、(ネタバレ含みます)


最後、精子の提供者であるポールと、家族が結局嫌悪感を覚えたまま終わってしまったから。そこは仲直りしてくれた方が観ている側としてはスッキリしたかなと思います。
ジュリアンムーアが好きで、ジュリアンが出演しているから、という理由で観た作品でしたが、観て良かった!!と思える作品でした。そしてジュリアンはとても可愛かったです😇😇
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