「日本敗れず(1954)」よりも前に、いちばんはやく宮城事件を扱ったであろう東映の戦争映画。
サンフランシスコ平和条約の発効が1952年4月28日。この映画は1952年5月1日とかなりの意図を感じる公開日。
後年追加された副題?である「終戦秘話」は、この映画の終盤で扱う宮城事件のことをさしてるって推測が成り立つ。実際、終戦と同時に発生した極右勢力によるクーデター宮城事件はびびるよね。
「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声(1950)」だったり、「ひろしま(1953)」など、反戦映画の傑作を手がけた関川秀雄らしく、憲兵を露悪的に描くことで、反権力スタンスは伝わってくる。ただし「左翼系知識人にとっての憲兵」なので、背中を丸めて生活していた庶民にとっての憲兵はまた違ってそうだなとこの映画を見た後で思った。
あーそうか、南京事件について言及は、左翼系監督だからってことだったのかな? そういえば、どっかで見たことある気がしたシーン(泥のなかの行軍)は「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」の二次利用か。
あとからいろいろ読み解けていく感じが個人的にめちゃ楽しい。
ただ、明確な反戦メッセージはなりを潜めているように見えた。
さて、映画の内容は、反体制寄りの新聞記者と、劇作家、そして憲兵に傷つけられた娘が庶民サイド。あとは、宮城事件周りの政治家・近衛兵たちの群像劇になっている。
後年の映画「八月十五日の動乱(1962)」のひな形のようでもあって、構成がかなり似ている。
もっと有名であってもおかしくない戦争映画だと思ったけど、埋もれた理由はなんだろうね。左翼系映画とその監督が冷遇されてきたってこともひとつの理由になってそう。
面白かった!