140字プロレス鶴見辰吾ジラ

用心棒の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
4.0
“フリーエージェント”

黒澤明×三船敏郎、そして仲代達矢。
男気抜群にして、憧れる男の理想像。

浪人が訪れたからっ風吹きすさむ宿場町。
ヤクザ者の抗争で荒れた町となっていた。
カネを払った方の用心棒になったやる。
童話の中の蝙蝠のような思惑の裏には
ヤクザ同士の抗争での同士討ちを狙っていた。

当時も映画のアクションやドラマ、そしてコメディの構成がジャンルレスになって映画の中に溶け込んでいるので、時代劇としての畏まったイメージではなく、アクションやコメディと身構えて見るモノでなく、1つの物語として次の展開へと身を乗り出せる快楽があると感じた。

黒澤明のDNAは疑いの余地もなく、後世の映画の礎になっているし、三船敏郎は理想の男性像として申し分ないし、三船敏郎は日本男子の到達点だと思う。そしてライバル役で登場する仲代達矢。ここらへんは、時代劇評論家の春日太一さんのラジオで聴いた補助線の部分が大きいが、三船×仲代の共演する作品を今後も見集めていきたと強く思えるオーラを纏っている。

クライマックスにつれて、コメディよりの愚行が続く抗争劇から、一線を越えての殺し合いへと雪崩れ込み、残虐さをともなったヤクザ者の抗争の決着に、主人公は刀を持ち、敵は短銃を携えるという、物理的な不利を乗り越えての決着シークエンスと、その世界で生きる男の心情を終焉と重ねながら見せる凄みを、「あばよ」を言いたくなるエモーションの最高到達点と、人の死で空虚になった宿場町の風景の物悲しさに乗せて辿り着く「終」にしみじみとさせられた。