りょう

ゾディアックのりょうのレビュー・感想・評価

ゾディアック(2006年製作の映画)
3.8
 今回で3回目になります。最初に観たときは、連続殺人鬼をテーマにしたデヴィッド・フィンチャー監督の作品なので、当然に「セブン」のような作風を期待しました。長年にわたって決定的な証拠もつかめない刑事や新聞記者たちの苦悩や焦燥感を淡々と描くばかりで、序盤以外は劇的なシーンもなければ、かなりモヤモヤする結末とか、ちょっと期待はずれというイメージでした。
 だた、結末をわかってしまえば、そこに至る過程がとても丁寧に描かれていることに着目できます。実際の未解決事件なんてこんな経過を辿るものなんだろうし、トースキーやエイヴリーが翻弄され、後半はグレイスミスがとり憑かれてしまうという映画的な演出もしっかりしています。
 157分という長尺ですが、彼らが収集した情報が膨大で、その説明には必要な時間だし、むしろもっと時間をかけてもらわないと頭のなかを整理できません。時間軸が完全に一方向でフラッシュバックなどはなく、ほぼほぼ時間の経過がテロップで表示されるので、登場人物と一緒に時間を(ついでに疲労感も)共有できます。
 マーク・ラファロが演じた刑事の役柄が印象的でした。彼はMCUのスター俳優というよりも、最近の「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」とか「スポットライト 世紀のスクープ」のような仕事人間がよく似合います。
 すべての殺人事件の真犯人がゾディアックだったわけではなく、だからこそ矛盾を解消できないまま捜査が混乱したんだと思います。筆跡や拳銃の線条痕、DNA鑑定でも容疑者を逮捕・起訴できなかった一方で、家宅捜索にはちゃんと令状をとっているし、自白を強要するような違法捜査もないところは好印象でした。ちょうどいいタイミングで公開された1970年の「ダーティハリー」が揶揄されていて面白かったです。
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