カツマ

ゾディアックのカツマのレビュー・感想・評価

ゾディアック(2006年製作の映画)
3.8
解けない謎は誘惑の罠。それは都市伝説のように浸食し、謎そのものが蠱惑的な香りを放つ。サスペンスの名手デヴィット・フィンチャーが描いたのは、伝説のシリアルキラーを追い続けた3人の男たち。彼らはそれぞれに事件に巻き込まれ、人生を狂わされ、そしてこの未解決事件の落としどころを探して彷徨い続ける。

原作はこの物語の主人公でもあるロバート・グレイスミスによるノンフィクション小説『ゾディアック』。犯人(通称ゾディアック)は劇場型シリアルキラーの元祖でもあり、宮部みゆき作『模倣犯』や雫井脩介作『犯人に告ぐ』といった日本の有名作品にも類似点が見受けられる。

〜あらすじ〜

その夜、カリフォルニア州を震撼させる伝説の事件の幕が上がる。バレーホの湖畔で若いカップルが何者かに銃撃され、殺されたのだ。
それから1ヶ月、各新聞社のもとにゾディアックと名乗るものから犯人にしか知り得ない事実が記された手紙が届く。そしてそこには謎めいた暗号文が添付されていた。
クロニクル紙で風刺漫画を担当するロバートは、編集会議で目にしたゾディアックの手紙から暗号を解読し、それを同僚の記者ポールへと伝えるも、どうやら暗号はすでに解かれた後だった。一方、ポールはその時期からゾディアック事件に飲み込まれていき、事件の担当刑事トスキーを巻き込んで、真犯人を追跡していくことになるのだが・・。

〜見どころと感想〜

この映画は実話ベースのため、時系列と事実関係をかなり大事にしている節がある。そのため、何も起きていない時期の時間は吹き飛ばされており、捜査は難航し、時間ばかりが過ぎていく過程がよく分かるようになっている。決して派手さは無いが、重厚で男臭い人間ドラマを主軸にしたスリラー要素の薄いサスペンス映画が誕生した。

ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、RDJの三つ巴が火花を散らす豪華キャストも大きな見どころの1つだろう。
『セブン』とは一味違うノンフィクションならではの緊迫感と寂寥感が、漂流し続ける真実を更に遠くへと漕ぎ出して、今現在も解決されていないこの事件のリアリティを克明に映し出す。解明されていないからこその誘惑。伝説のシリアルキラーの名はいまなお伝説のまま闇の中を遭難し続けている。
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