素晴らしい。
ヒトラーが独伊同盟締結の為、ローマを訪れムッソリーニの歓迎を受けたその特別な日、市井の名も無き男女二人に起こった細やかな感情の機微を、精緻に、且つ詩情を以て描いた物語です。
エットーレ・スコラ監督作品。
主演はソフィア・ローレン＆マルチェロ・マストロヤンニ。
本作は誰しも社会生活を送る中で、一度は得た事はあるであろう、ある集団・あるマーカーの中での疎外感と、それに拠る感情の機微を描いた作品である為、本レビューにてその内容に触れる事は致しません。
"単なるメロドラマと捉えるには、勿体ない"、とだけ記しておきます。
特筆すべき点はカメラワークにも有り、冒頭の長回しによる縦・奥移動には瞠目しましたし、屋上での二人をシルエットで撮ったショットには強く印象を受けました。
才気煥発たる監督による暗喩に溢れた作品や、メッセージ性の強い作品による省察もまた楽しい物では有りますが、本作の様な押し付けがましさやあざとさの全く無い、人の温もりを持った作品にこそ私は惹かれます。
深い夜、一人静かに鑑賞したい作品でした。
