くりふ

カトマンズの男のくりふのレビュー・感想・評価

カトマンズの男(1965年製作の映画)
3.0
【カトマンズじゃない男】

U-NEXTにあったので。ベルモンド関連は縁がなくあまり見ていなかったが、カトマンズは縁があるので、『リオの男』より先にこちらを見てみた。

体を張ったアクションが主食で、ドタバタ話で間をつなぎ、エキゾチックスパイスを振りかけてある。

スタントなしのアクションはやはり貴重で、ベルモンドに留まらず、共演の皆さんもココまでやるか!と驚く。後にジャッキー・チェンがアップデートする“竹の足場チェイス”は今でも、飛び抜けてオモロ!編集で誤魔化すクラッシュ抜きのカークラッシュなどにも、笑っちゃうけど巧いなあ…と感心する。

一方、今では感心できないのが、売りでもある“エキゾチック”の部分。

アジア各国を巡るも、これではコロニアリズム視線丸出しではと。白人たちが、迷惑でしかない破壊行為を繰り広げて謝罪もせず、壊したら次へ行く…の繰り返し。現地の人たちは、ゴジラに潰される街並みたいなもの。これぞアカデミー授賞式でも可視化された“透明なアジア人”だよね。この頃も不変だったと。

異文化をリスペクトする気もないらしい。ギョッとしたのは、ヒマラヤにある“神の谷”寺院へ行くと…なんと、外国人は火炙り!?…イウォークの村かよ!

今や世界遺産である「カトマンズの渓谷」でロケしており、貴重な映像なのにヒドイ話。現地の素朴な人らを騙して撮ったんじゃないかな。

原題を直訳すると“中国における中国人の苦難”らしいが、主舞台である1965年当時の香港を中国と言っちゃうのも雑では?意味するのはベルモンド一行に困らせられる、現地人の苦悩を指すのでしょうが。w

とはいえ人のことも言えない。邦題がウソだから。ヒマラヤの“神の谷”は標高6000mにある設定で、ベルモンドらはインドから直接、ヒマラヤと称された場所に向かい、カトマンズには寄らないことになる。

“神の谷”からご近所に降りるっぽい描写も挟まれるが…標高アレだから!その後、再び雪山が登場し物語上は、現実のカトマンズ盆地は登場できない。ゆえか地名も出さないしね。誰が付けたんこの邦題?

まあ全般、当時はこういうもんだった…ではあるけれど、現代では、反面教師にすべきはしないとね。

若きベルモンドの役は自己中過剰だが、本人の佇まいはすっきりで割と心地よく見られる。相手役ウルスラ・アンドレスは、オンナを売りにさせられ過ぎており、ちょっち胸焼けがする。

あ、でもウルスラ姐さんの純白ランジェリー姿は、胸焼けへの中和効果がありステキでした。

<2024.8.8記>
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