りょうた

糧なき土地のりょうたのネタバレレビュー・内容・結末

糧なき土地(1932年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ナレーションが一歩ほど先走っている印象を受けた。数日間同じ場所に座り込んでいた少女が亡くなったとナレーションで語るが、少女が数日間座りこんでいた時間がみえない。そのこともあり実感として骨まで伝わってこない。省略によって描かれない部分が多いことも大きな要因だろう。ナレーションはその省略によってできた空白を言葉で埋めようとするのだが、その言葉が一方向への解釈を促すような、そして、あたかもそうであると確信しているような印象を受ける。このことを一歩先走っているとわたしは形容した。
村の「野蛮な」儀式において、生きた鶏の首を引きちぎるシークエンスがあるが、そこは鶏のクローズアップとロングショットによって構成されている。そのこともありこのシークエンスの強度が下がっていると言えるだろう。それは崖からヤギが落下するシークエンスも同様である。さらにヤギのシーンでは、カメラの真下からヤギが転落することを考えると、演出が一際目立ってしまっている。
今作のプロパガンダ的側面(主にナレーションとキャプションの一方向性)やモンタージュ、省略法によって幾分か映像の強度を損なっていると感じるし、また、フィクショナルな印象も多大に受ける。フィクション性を強く意識する観客のわたしと、事実であることを必死で伝えようとするナレーターの間の大きな溝、終始この溝は埋まらなかった。
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