優しいアロエ

俺たちに明日はないの優しいアロエのレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
4.2
 自由を求めて。20世期初頭の実在の強盗殺人カップルにして、反権威主義のポップアイコンと化している、ボニー・パーカーとクライド・バロウの逃避行。

 現実逃避と犯罪という本作の根幹たる2つのテーマは、それまでの映画表現からの脱却を目指したアメリカンニューシネマの先駆けとしてこの上なく見合った題材だった。ジャンプカットやスピーディな展開などからヌーヴェルヴァーグとの類似性も指摘されるがそれも納得。なかでも『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』を彷彿とさせる。(クライド役のウォーレン・ベイティはベルモントそっくりだ)

 また、劇中で多くの人間がボニーとクライドに感化されて、行動を共にするあたり、窮屈な社会に生きる人々への変化を促そうという思いがこの映画に込められていたように感じる。「貧困に苦しむ人の味方になろう」という思いをボニクラが実際に抱いていたかはわからないが、単に「自由を求めて道を駆け巡る」というところに十分に人々を煽る力があっただろうと思う。かく言う私も、明日なんて考えずに生きる2人に憧れている人間のひとりだし、『俺たちに明日はない』という大それた邦題もアメリカンニューシネマ全体のことを一言で表しているように思えて嫌いになれない。

 とはいえ、本作は犯罪者を英雄視しすぎではという声も聞こえてきそうではある。しかし、そんな煩型を一斉に黙らせるのがラストの蜂の巣シーンである。史実に基づいているシーンとはいえ、あそこは素直に因果応報を感じざるを得ない。また、ボニクラを追う側を描いたNetflixの『ザ・テキサス・レンジャーズ』がそこを中和してくれているそうなので、次はそちらを。
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