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俺たちに明日はないのcollinaのレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
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どうしても60s,70sのハリウッド映画を観たくて。
Bonny and Clyde を「俺たちに明日はない」と訳すセンス私にも欲しい。

バイオレンスなシーンがある映画はダメだって言ったんですけどね。完全にフェイ・ダナウェイに魅了されてしまったんです。夢物語があっけなく散るさまは悲壮より、無常。短いエンドロールもいい。

フェイ・ダナウェイが最高に魅力的。田舎のウエイトレスだったボニーが犯罪に手を染めていく姿に、女の私だって惚れてしまう。(こうなりたいとはいいません)軽妙なカントリーミュージックにのって、銀行を襲いながら街から街へと旅するボニーとクライドを観ていると、彼らがクールな存在に見える。

世界恐慌後、苦しい生活を強いられる人々にとって、銀行を襲う彼らはヒーロー。特に若者や貧しい人々にとっては。2人は何もしてくれない大人や政治家よりも、よっぽど頼りになる存在。ボニーとクライドが街に来たと騒ぐ人々。冷酷に追う保安官。2人は「いい人」と語る貧農。水や食べ物を与える人々。ボニーに「現実を見ろ」と語る彼女の母。ボニーとクライドを尊敬の眼差しで見つめ、目を輝かせて語る息子。その息子を苦々しくみつめ、罵る父。

ボニーとクライドは世論を掻き回し、倫理観を揺さぶる。

そこがジョーカーと似ているようにも思えたけれど、ジョーカーはやっぱりヴィランであって、ボニーとクライドはあくまでヴィランではなく、アンチヒーローなのかなと。とはいえ、混乱の時代に人が求めるものは同じで、大きな権力に対するカタルシスを渇望しているのかもしれません。
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