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ジャーヘッドのTAのレビュー・感想・評価

ジャーヘッド(2005年製作の映画)
3.6
 ジャーヘッド(ビン頭)とは髪型がビンの形に似ていることから付けられたアメリカ海兵隊員たちのあだ名のこと。

 湾岸戦争直前、スウォフォード(ジェイク・ギレンホール)は入隊した海兵隊で厳しい訓練を受け、上官のサイクス三等曹長(ジェイミー・フォックス)らと共にサウジアラビアの砂漠地帯へ派遣される。
 国の為に戦うつもりで来たはずだったが、そこでは自分が手を下さなくても目の前にはゴロゴロと死体の山が築かれていく。想像とはまるで違う「戦争」で、行き場の無い志気がストレスとなり、それはいつしか歪んだ戦闘欲求として徐々に彼らの精神を蝕んでゆきます。

   この映画で描かれる狂気は他のそれとは若干異なった視点で表現されており、実際に湾岸戦争に従事した若者の実体験に基づいていながら比較的ドンパチせず、またグロテスクな描写も皆無に等しい戦争映画にも関わらず、観る者に対して全く容赦の無い不快な温度を与えるのは監督サム・メンデスだからこそ。

   どちらかと言うと男子校の青春映画みたいな下品なノリが多くて笑ってしまうところもあるが、戦争という非日常の中に置かれて平常心で居られる者の方が少ないことを考えると、楽しそうな彼らの表情の裏に哀愁すら感じてしまう。戦争が終わって帰国した彼らの姿と対比すると尚更だ。
   戦争など誰も望んでいないが、一度足を踏み入れ、武器を握るとその手が銃の感触を忘れる日は来ない。その手触りを懐かしむ異常な日常を過ごすくらいなら、戦場に戻った方が気が楽でさえあるのだろう。
   色んな切り口で戦争の悲惨さを伝える映画は多いけど、こんなノリの戦争映画はあまり見掛けない。   

   『ナイトクローラー』で強烈な役を演じたジェイク・ギレンホールが好きになった思い出の深い作品。
   ちなみに、ジェイミー・フォックス演じるサイクス三等曹長の使う小さい口笛のような合図が、彼が『キングダム』の時に使ったそれと同じだったことにニヤリ☆
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