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ひめゆりの塔のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

ひめゆりの塔(1953年製作の映画)
4.1
「ひめゆりの塔」1953(昭和28年)東映

「大本営発表によれば天長節の総攻撃で敵艦船は何十隻も撃沈しているんだ。しかし海を見ると敵艦戦で埋め尽くされている。一体どうなってるんだ」

1968年日活版「あゝひめゆりの塔」は現代から始まる。戦況を表す地図とアニメの解説が入り太平洋戦争末期、沖縄が北上する米軍から日本本土を守るための最後の砦だったことがわかる。

1953年(昭和28年)製作のこの作品にはその様な解説はない。観客のほとんどが戦争を体験していたからだ。自明のことだったのだ。戦後生まれの子供はまだ8歳だった。

この映画は1945年3月25日から始まる。教師を養成する師範学校の生徒達が前線の病院壕に看護助手として徴発される場面からだ。

大日本帝国は連日連夜鬼畜米英に攻撃を加えて撃滅しているはずなのに毎日毎日爆弾が落ちて戦闘機が機銃掃射を行う。

ついに病院壕を放棄して転進(撤退)する時が来る。

雨の中、傷ついた同級生を防空壕に運ぶ。すると他の部隊の兵士が壕を病院部隊には使わせないという。自分達の司令部として使うから民間人も出ていけ。

民間人を見捨てて自決を強要する大日本帝国陸軍は全くもって恥ずべき連中である。

投降を呼びかける米軍の呼びかけに応じた女生徒を射殺する軍医。

国民の命を守ろうとしない政府・軍隊。covid19から国民を守ろうとしているフリだけしている今の政府にも通じるものがある。

登場人物はみんな死ぬ。米軍に降伏しないで殺されてしまう。「終」→暗転。

さだまさしの甘ったるい歌なんか流れない。(ちなみに本編の音楽は古関裕而)

脚本水木洋子、監督今井正は闇の中に観客を残して去る。私達の心に深い爪痕を残して。後はあなた達が考えて下さい。そう言っている様だ。
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