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栄光のランナー 1936ベルリンのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【スポーツ映画のススメ】
 栄光のランナー/1936ベルリン (2016)
◆競技名:
🏃‍♂️陸上競技
◆競技の舞台:
 ベルリン・オリンピック (1936)
陸上100m/200m/400mリレー
 走り幅跳び
 
〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・アメリカの貧しい家庭に生まれながら、陸上選手として類いまれな才能を持つジェシー・オーエンスは、オハイオ州立大学コーチのスナイダーと出会い、オリンピックを目指して日々練習に励む。
・しかしアメリカ国内はナチスに反対し、ベルリンオリンピックをボイコットする機運が高まっていた。黒人であるオーエンスにとっても、ナチスによる人種差別政策は、当然容認できるものではなかった…。

〈見処〉
①「ナチスによる五輪」でヒトラーの
 鼻を明かした黒人アスリートの勇気 
・『栄光のランナー/1936ベルリン』(英題: Race)は、2016年にアメリカ・ドイツ・カナダ合作に製作された伝記映画。
・「アーリア人こそ最も優れた種」と人種主義を打ち出すナチス主催の五輪出場は、人種差別にさらされる黒人にとって、自らの差別を認めることになる…。本作は、60年代にピークを迎える米国公民権運動より遡ること約20年以上も前の1936年、ナチス独裁政権下で開催されたベルリン五輪で史上初の4冠を達成したアメリカの黒人陸上競技選手、ジェシー・オーエンスの半生を描く。
・完全アウェイのベルリン五輪にて100m、200m、400mリレー、走り幅跳びの4種目で金メダルを獲得したオーエンスは、1984年のロサンゼルス五輪でカール・ルイスが同一種目の4冠達成するまで、米国内でも語られることが少ない「埋もれた史実」であったが、本作では彼の苦悩と偉業が丁寧に語られている。

②五輪と政治
・本作でジェレミー・アイアンズが演じる米国五輪委員会のアベリー・ブランデージ会長は「スポーツに政治を持ち込むべきではない」と主張、米国のベルリン五輪出場を後押しする反面、ナチスから裏取引を持ちかけられるシーンが描かれている。
・本業が建築業である実際のブランデージは、ナチスと米国内のドイツ大使館建設をめぐる裏取引を行うなど「反ユダヤと親ナチ」を指摘されていた人物。第二次大戦後の1952年には、国際オリンピック委員会(IOC)委員長まで登り詰めている。
・さらに彼が委員長を務めていた期間に開催された1972年ミュンヘンオリンピックでは、スピルバーグ監督作『ミュンヘン』(2005)でも描かれた、パレスチナ過激派によるイスラエル代表のユダヤ人アスリート11人が殺害される大事件が発生。ブランデージは不可解にもオリンピック開催を継続する決定を下しているが、五輪の闇は存在するのだろうか。

③結び…本作の見処は?
「埋もれた史実」ジェシー・オーエンスの偉業を世に広める製作意義の高い作品。
○: 政治に左右される五輪アスリートたちをサスペンス映画並みの高い緊張感で描いている。当時は国家威信のスポーツは戦場であり、参加することは命懸けであったのだ。
▲: ベルリン五輪の大観衆を前に競技するアスリートたち。その臨場感が本作の見どころの一つであるが、 2016年製作作品としては、その合成処理にアラが目立つのが大変残念。
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