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栄光のランナー 1936ベルリンのKUBOのレビュー・感想・評価

3.8
第二次大戦前、1936年のベルリンオリンピックで4つの金メダルを獲得した黒人天才ランナー、ジェシー・オーエンスの実話に基づく作品。

差別を乗り越えて成功を手にする黒人スポーツ選手の話だとメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンを描いた「42〜世界を変えた男〜」などもあるが、この作品では後半、ユダヤ人迫害が始まったドイツでのオリンピックが舞台になるだけに、単にスポーツだけではなく政治も絡むのでより複雑だ。

前半は貧しい家庭に生まれ育ったジェシーが大学に進学し、陸上部でコーチのラリーに出会い頭角をあらわすまで。後半はベルリンオリンピックを舞台にした、黒人だけでなく、ユダヤ人も含めた大きな意味での人種差別をテーマに、ジェシーの挑戦が描かれている。

黒人の人種差別ものは数々あるが、この時代、このオリンピックを舞台にすることで、他にはない様々な問題が浮かび上がってくるのが興味深い。

「ユダヤ人や黒人の選手を出場させるな」と言ってきているドイツに対して、ボイコットするか否かで大激論を交わすアメリカのオリンピック委員会。

NAACP(全米黒人地位向上協会)から、人種差別に反対する意味で、オリンピックへの出場辞退を迫られるジェシー。

大会の成功を映画に収めて後世に残そうとするゲッベルス。黒人の金メダリストとは握手もせず席を立つヒトラー。

一番の見所は、終盤の走り幅跳びのヨーロッパチャンピオン、ロングとの決勝。様々な問題や困難があっても、スポーツマン同士の爽やかな友情に心洗われる。

スポーツが政治に翻弄された時代を走り抜けた天才ランナー、ジェシーの物語。秀作です。
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