keith中村

若草物語のkeith中村のレビュー・感想・評価

若草物語(1994年製作の映画)
3.5
 グレタ・ガーウィグも劇場で2回観たし、「若草物語祭」状態で、過去作を観返しているんだけれど、本作もちょうどNetflixで配信が始まったので、DVDより良い画質で再見。
 
 前に観た時も思ったんだけれど、やっぱりジョーのキャラクタがいちばんジョーらしくないのが、本バージョン。
 そもそもウィノがガーリーすぎるので、ジョーっぽくない。
 あと、キャラクタ造形もいまいちで、ローリーの求婚を拒絶するロジックやエモーションがよくわからない。その癖、ニューヨークではベア教授とがっつり恋愛関係みたいになっている。
 
 あと、エピソードの配置の仕方もうまくなくて、とくにベス周り。
 猩紅熱への罹患と、ピアノのプレゼントの時系列が逆転し、ローレンスさんとベスとの交流が希薄なので、ちょいちょい映るローレンスさんが「ところでお前、誰やねん」状態になってしまっている。
 ドイツ移民のハンメルさん一家も、最初に食事を持って行った後が描かれないので、うかっとしているとベスが誰に猩紅熱を移されたのかがわかりにくくなっている。
 
 とはいえ、もちろん、良いところもある。
 当時の女性にとって、ほぼ唯一の経済的安定手段が結婚しかないことが繰り返し提示されるのは、映画史上本作が初めて(だと思う。ジョージ・キューカー版とマーヴィン・ルロイ版にはなかったし、それ以前に作られたサイレント映画の2本は未見なんだけれど)。
 それから、これは実際のオルコットの両親を重ねているんだけれど、彼らが超越主義者であることが台詞で語られるし、マーミィ(本作ではスーザン・サランドン)の台詞にもそれを匂わせるものが数多く入っている。
 北軍に属するマサチューセッツ州が舞台なので、黒人が一切登場しない作品なんだけれど、セリフの上で奴隷制度を語っているのも本バージョンが初めて。片足の無い傷痍軍人が映るところもどきりとさせられる。
 このあたりは、本作のプロデューサー、デニーズ・ディ・ノヴィの「現代的アップデートをしたい」という意思が入っていると思われる。この人、グレタ・ガーウィグ版でも製作をやっていることだし。
 
 あと、マーチ家の外観が実際のオーチャード・ハウスにそっくり。エンドロールのSpecial Thanksに入っていたので、ロケをしたのか、もしくはオープンセットで忠実に再現したのかだろう。
 
 そのマーチ家が学校になるまでを初めて映像化したのはグレタ・ガーウィグ版だが、本作でも台詞としてそのことに触れている。
 
 それに、グレタ・ガーウィグ版がはっきりとエイミーとジョーの対比構造になっているんだけれど、そこは本作も同じ。
 「若草物語」は数多くありますが、優劣を論じるのではなく、違いを楽しむのがいいと思います。