けんぼー

回路のけんぼーのレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
3.5
2020年鑑賞191本目。
「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」的な映画。

黒沢清監督最新作の「スパイの妻」を見ようと思い、その予習のために観賞。昔からこの映画の存在は知っていたし、単純にホラー映画だと思っていた。
もちろん、怖い描写は随所にある。全体を通して雰囲気が暗い。単純に暗いだけではなく、暗さの質感が怖い。見た人はみんな恐怖するであろう、ある女性の気持ち悪い動きなど、人が怖がる描写をよく理解したシーンが印象的。
しかし、この作品は「ホラー」なのだろうか。
物語中盤までは「単純なホラー」な展開が続くが、後半になるとかなり思想的な、抽象的な「死」や「人と人とのつながり」をテーマにした物語になるのが本作の特徴。
よって「呪怨」や「リング」などのJホラー代表作と同じベクトルの作品を期待して見ると、後半で肩透かしを食らうかもしれない。
結果として、物語全体としてはなんだかわかるような、わからないような・・・って感じ。
まさに「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」的な映画だと思った。
パッケージの怖さや、序盤のホラー展開で暗ーいトンネルの中を怖がりながら進んでいく感覚を味わったと思ったら、急に景色が変わり、「なんだこれは」「今まで見てきたのは果たしてホラーだったのか?」とあっけにとられる感覚。
ストーリーの理解については何とも言い難い、すっきりしない後味が残るが、恐怖描写はさすがとしか言いようがない。

2020/11/8観賞