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回路のRのレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
4.5
めちゃめちゃ久しぶりに6回目くらいを見てみた! 今見ると最初から最後までストーリーの展開がものすご唐突。ちょっと笑ってしまうくらい。けどそんなことはお構いなしで、不気味な異世界感をむんむん漂わせたまま、ぐいぐい現実を侵食していくホラー現象。初めはゆっくりジワジワと、気づけばいつしかそこら中に、精神を蝕むイヤーな感じが蔓延している。冒頭、連絡がとれなくなった同僚の田口を心配するミチが彼の部屋を訪れると、どうも気力がない感じで、ミチが目を離したすきに首をくくってその場で自殺する。その後、身の周りに、マンションのドアを赤いテープで封じてる人をチラホラ目にするようになり、同時に、行方不明になったり自殺したりする人が増え始める…。また別のところでは、男子大学生の川島がインターネットをやり始めたら、途端に訳のわからん幽霊サイトに接続されてしまい、パニックった川島は、大学の理工学部で出会った春江に助けを求めて、そのサイトの正体を突き止めようとする。だが、今度は春江の様子が少しずつおかしくなり、同時に世界がおかしくなっていってるのに気づき始める。一体世界に何が起こっているのか? とりあえず、表面上は、インターネットを通じて幽霊が広がって、その呪いにかかった人は自殺し、自殺者の怨念がシミになってこびりついてその場に残っていくって感じなんやけど、途中から実はぜんぜんそんな表層的な話じゃないことがわかってくる。春江の研究室のパソコンのスクリーンに浮かぶ白い玉と、ミチの会社の社長のことばで、ストーリーのテーマがハッキリしてきて、終盤にはバラついた印象のエピソードがひとつの方向に収斂していく。ネタバレになるので具体的には書かないが、一言で言うと、人間は前に前に進み続けることをしなければ、孤独な幽霊と同じだ、ということじゃないだろうか。絶望、諦め、妥協、などなどで人間が前進を止めてしまったとき、それは生きたまま死んでるのと同義。そして、春江のことばをヒントに考えると、死んだあと天国でハッピーに暮らせるとか、極楽浄土に行けるとか、んなわけがないんです、我々は我々の生きた人生と何ら変わらぬ死後の状態へ突入する、すると自らの状態を変化させる能動性が死によって完全に失われてしまうため、死ぬ前の状態が永久に続いていく。てことは、裏返せば、本作で描かれるいちばん最後の死は、それ以前に描かれる多くの死とはまったく異なる意味を持つことになる…。人間は死ぬまで前に進むことをやめてはならない、そうでなければ、真に人間的なつながりを得ることはできない、そして、前に進み続ける人たちの間にできた真のつながりは、幽霊たちの永遠の孤独と同様、永遠に続いていくものなのだ。そんな希望に満ちたメッセージを、ホラーの形式で寓話的に描いたのが、この回路という映画なのではないかと思う。それがために、展開としてちょっと無理矢理だなぁと思う部分や、あまりにも不自然なセリフがチラホラあるのも、まぁしょうがないんじゃないかな。とはいえ、コントラストの強烈な、くすんだ光に照らされた異様な美しさのみなぎる映像、鳥肌モノの気味の悪い音響とホラー演出、終盤の世界の終末感などなど、すばらしすぎて一瞬も目が離せない!