<概説>
辺鄙な田舎町にやってきた男は、そこで美しき少女と吸血鬼の脅威に遭遇することとなる。男は長年続いた怪物の因縁を断ち切ることはできるのか。デンマークの天才によって寡黙に演出される、サイレント映画後期のホラー映画。
<感想>
ドライヤー映画はこれが二作目。
率直な印象として監督はとても多芸ですね。
『裁かるるジャンヌ』はクローズアップを多用した抒情的な作品だったのですけれど、本作は舞台セットを有効活用した雰囲気王道ホラー。
全体的に映像に陰があり、サイレント映画ならではのアスペクト比も相まって嫌な閉塞感があります。
視点にしても『ジャンヌ』の二人称視点からかなり違う。
舞台の窓から俯瞰した三人称視点だったり。棺桶から外部を覗くような一人称視点だったり。極めつけにサイレント前衛主義的な抽象表現だったり。
ホラー映画としての評価はいまひとつハッキリしませんけれど、映像史的にはなかなかおもしろい作品だったのではないかなあと。
しかしこの頃はサイレントとトーキーが混在している作品もあるのに驚かされましたね。
初トーキー映画である『ジャズ・シンガー』もそんな風でしたけれど、4年経過後も半有声半無声の作品があるとは。