このレビューはネタバレを含みます
偉大なる脚本家兼監督ビリー・ワイルダーの代表作中の代表作。
大都会に生活する男女の恋物語を、甘く、可笑しく、そしてホロ苦く描いた名作であります。
色々な方がレビューで既に書かれているが、伏線のすごさ、シチュエーションの秀逸さに関して、同監督のフィルモグラフィの中でもずば抜けた出来の映画である。
ただ、一点だけ私は声を大にしていいたい(笑)
ラストのジン・ラミーについて、あまり解説がされてないように思えてならない。あれは10枚ずつ配ってからはじめるゲーム。
それを10枚以上になっても気づかず、いつまでも配り続けるバクスター、そしていつまでもカードを受けとるキューブリック…というのが映画のオチになっているのである。
ところが、この映画のとんでもないのは、単なるギャグでとどまっていないという点!
つまり、二人の視界にはもうお互いの姿しか見えていないのだ。好きだという言葉さえなくても、二人の心が一つに結ばれていることを見事に表現している。
さらに言えば、ゲームのルールというのは例えるなら絶対的な社会の規程であり、大抵の人間はそんな規定に束縛されながら生きている。
それをこの映画は、「そんなの俺たちゃ知らねぇよ」とサラリと言って、あらゆる規定に束縛されない、本当の自由を手に入れた男女の姿を描いているのだ。
改めて考えると、世の中のルールというのは人間が勝手に考えたこと。それを守るためにかえって悲しみや苦しみが生まれるのも馬鹿馬鹿しい話。
部下が上司のいうことに逆らえないなんて、その最たる例である。
人間が人間らしく生きる、これこそメンシュになるってことではないのだろうか。