しんご

イージー★ライダーのしんごのレビュー・感想・評価

イージー★ライダー(1969年製作の映画)
4.0
端的に言えばアメリカ映画界の懐の広さを感じるに尽きる作品。「アメリカン・ドリーム」という古典的な言葉は「自由の国」アメリカを象徴するものだが、その国で自由がとことん排除される話を描くんだからこれは否応なしに惹き付けられる。

大金を得たヒッピー2人がバイクで大陸を横断するストーリーだが、正直内容らしい内容はゼロに等しい。麻薬常用者であったデニス・ホッパーが監督も兼任しているだけあって、撮影も大麻を吸いながらのアブノーマルさであったらしく、終盤の皆がLSDでラリるシーンはもうサイケかつカオス過ぎて支離滅裂な世界が繰り広げられる。

そんな中でも、ジャック・ニコルソン演じるハンセン弁護士が発する強烈なメッセージが本作を濃く締める。

「自由を謳う奴はこの国に腐るほどいるが、実際に自由な奴を見ると皆怖くなるのさ」...この言葉には唸らざるを得ない。さらにハンセン曰く、「でもそんな奴らに"お前は不自由だ"なんて絶対に言うなよ。奴らは自分が自由だってことを証明せんがために、自由なお前らを殺すくらい平気でするからな」

「自由を主張できること」と「実際に自由であること」のギャップをここまでシビアに掘り下げるのを、ヒッピー全盛のこの時代に既に描いていたことにただ驚くばかり。

それを踏まえて見るあの悲劇的なラストシーンは、「体制」の怖さが垣間見えるものとしてずっと私の心にこびり付いて離れないことだろう。
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