140字プロレス鶴見辰吾ジラ

プレデターの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

プレデター(1987年製作の映画)
3.8
”バランス”

「ダイハード」のジョン・マクティアナン。
「コマンドー」のアーノルド・シュワルツェネッガー。
密林の戦場。
重火器の乱舞。
宇宙から来た狩人。
「見えない。」
「見えてる?」
「見えてない?」
「見えた。」
「なんと醜い…」

「ダイ・ハード」で類まれなる、敵との交戦状況を作り、張られた伏線とその回収力の妙でアクション映画史に名を残した稀有な作品。その前年に公開された「プレデター」でも構成というバランスの妙は感じられる。対するエイリアンハンターは、自らを密林にて迷彩色のさらに上のレベルの透明化の能力と、殺傷力のある武器に加え、死体の皮をはいで吊るすという残虐性がある。人類代表はシュワルツェネッガー率いる脳筋軍隊と重火器のオンパレード。宇宙人vs現代兵器の構図は「インデペンデンスデイ」の戦闘機の群れの度を越した格好良さと、絶望的な異星人のテクノロジーの差にある位置エネルギー性にあるが、今作のプレデターの重火器を嘲笑う前半部の絶望感も素晴らしい。筋肉マッチョマンとサイコっ気漂う狩人異星人との闘いは、現代兵器の無力感に大きく敵側への追加点を許していくが、敵側の余裕あるテクノロジーの穴をついて逆転をしていく様の肉体を駆使した、そして兵器というか戦闘の段階を退化させた後の、戦闘のアンチテクノロジー感。そしてハイテクノロジーを老害的戦闘にて打ち倒していく様は、「バトルシップ」の戦艦ミズーリの姥捨てられるローテクの逆転劇とも呼応する。決して低予算モンスター映画のようなファニーさや、グロさだけのアンバランスさはなく、敵味方のシーソーゲームにスリリングというバランス感覚は、映画という平均台の上で踊らされる我々観客の気持ちをよく理解していた。