Kuuta

プレデターのKuutaのレビュー・感想・評価

プレデター(1987年製作の映画)
3.5
地球上の暴力性の全てを全盛期のシュワに背負わせ、宇宙人と戦わせる映画。

一番はやはりプレデターの魅力。単身修行に来たのだろうか。ジャングルに身を置いて、獲物を狩る日々。怪我を治そうとして痛みでぎゃああと叫んだり、戦利品の骸骨を大事そうに撫でたり。自分を律する孤高の戦士として、ご尊顔のデザイン含めキャラ造形が完璧だ。

対するは、ターミネーター、コマンドーを経て、地球上に敵がいなくなったシュワ。冒頭のカール・ウェザースとの空中腕相撲は最高だが、中盤までは精鋭部隊のリーダーとしてまともに周囲に指示を出す場面が多く、彼自身があまり体を張らないのが物足りない(コマンドー同様、人質の場所を確認せずに基地を焼き払う姿勢は流石)。

だが、状況が悪化し、暴力性が剥き出しになるにつれて彼の服は勝手に脱げていく。中盤は素肌にベストのコマンドースタイルだが、プレデターに撃たれる事でベストが弾け飛び、鍛え抜いた肉体が露わになるという神演出。罠を作ってる時も、筋トレしてるようにしか見えない。

彼は川に逃げ込み、人間性すらも剥ぎ取られ、泥まみれで陸に上がる。文字通り地球と一体化した彼は、初めてプレデターの目線を回避し、まともに戦えるようになる。

地球の暴力対プレデターの暴力。肉体だけの完全に対等な異文化コミュニケーション。同じ緊張感をシュワも、プレデターも味わっている。私の目にはE.Tやシェイプオブウォーターと大して変わらないストーリーに見える。「血が出るなら殺せる」の一言は、宇宙人との殺し合いを相互理解のプロセスに置き換えてしまう、この上ない至言だと思う。

クライマックスで、泥を浴びた時と同一の構図が繰り返される。今度は泥を洗い流し、人間性を復活させるシュワ。ギミックを使ってプレデターを追い詰めるが、死闘を繰り広げた好敵手に、自分をダブらせたのだろう。「What the hell are you?」と互いに問いかけるが、最後の一撃を放つ事が出来ない。どこにも理解者のいないはずのシュワが、図らずも「他者」を見つけた瞬間。切なさと戸惑いの混ざった表情が素晴らしい。

という事で、地獄の黙示録と化していくラスト30分はとても楽しいが、シュワが服を着ている最初の1時間は、私にはイマイチ楽しみ方が分からない。70点。
Kuuta

Kuuta