Kumonohate

歌行燈のKumonohateのレビュー・感想・評価

歌行燈(1960年製作の映画)
4.5
どうにも芸道モノというのはピシッとしていて良い。泉鏡花原作の「歌行燈」も、成瀬巳喜男版は勿論この衣笠禎之助版も相当に良い。市川雷蔵と山本富士子の背筋がピシッと伸びているのが良い。しかも、ただピシッとしているだけではない。一体全体ワンカットにどんだけ手間暇かけとんじゃいとツッコミたくなるほどの絵画のような映像美! 一歩間違えばやりすぎと言えなくもない贅沢さである。

加えて唸らされるのは、単に美しいだけでなく寡黙なセリフを補う映像の能弁さ。セリフに頼ることなく映像によって(映像化された状況によって)全てが説明されてゆき、しかも、饒舌になりすぎることが無い。これだけ映像で提示すれば後は言わずもがなだろうと、決定的瞬間を敢えて描かない上品感! 一歩間違えば見せなさすぎと言えなくもない贅沢さである。

カット割り、画角、構図、所作、テンポ、セリフ、メイク、編集など、おそらくは今のユーザには受け入れられにくいであろう要素のオンパレード。なのにラストシーンでは涙を拭う。歳をとったとか腰を痛めて弱ってるとか関係ない、傑作だと思う。
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