このレビューはネタバレを含みます
この映画、劇場公開時に観たっきりなのだが、とにかく「妙な居心地の悪さ」を感じたことはよく覚えている。
何と言うか、感動の直後にうすら寒い感覚が来るのである。
情動に興味がないとおぼしきキューブリックのシナリオにスピルバーグが半ば強引にヒューマニズムを投入した結果、本来そこにあるはずのないパーツが紛れ込んで実に歪な形で観客の涙を誘ってしまっているように思える。
確かにこれは「健気に母親を求めるAIロボのお話」なのだが、映画の最初と最後だけを抜き出してみると「人間の都合で産み出された機械が、自分に都合のいい人間を手に入れる」という皮肉に満ちた寓話にしか見えなくなる。
おそらく居心地の悪さの正体はその感動とアイロニーが中途半端に交わってしまっているが故なのだろうが、それだけにあれこれ考える余地を残しているという、実に蠱惑的な作品である。