note

A.I.のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

A.I.(2001年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

地球温暖化が進み、人間の出生の制限がかけられた時代。心を持った少年型ロボット・デイビッドが開発される。彼は起動させた人間を愛するようにプログラムされていた。デイビッドは息子が病気で冷凍保存されている夫婦の元に試作品としてやってくる…。

物語の骨子は「ピノキオ」そのまま。
スタンリー・キューブリックが長年温めてきた企画をスティーヴン・スピルバーグが監督した作品。
しかし、結果的に誰も幸せにならない恐ろしく哀しい映画だ。

植物状態の息子を持つ母親と、妻が元気になるきっかけが欲しい父親。
何も知らぬ身代わりのロボットに愛を与え、自分たちに愛を求めさせる。
気持ちは分からないでもないが、寂しさをペットで埋めるような感覚だ。

奇跡的に復活した息子は、自分の代わりに用意されたロボットに、自分と同じ愛情がかけられていることに嫉妬する。
罪のないロボットに対するイジメ。
それを許してしまう両親。
まるで溺死を望むかのように、プールに取り残されるデイビッドの姿にはゾッとすることは間違いない。
彼が人間ならば、どうするつもりなのか?

所詮、ロボットは「モノ」だと道端に捨ててしまうとは何という人間の身勝手さか。
この作品を「子供向け」とするのは、あまりに悲しい。
デイビッドに捨てられるペットや子どもを重ねると、子どもが見ても「ヒドい、あんまりだ」と思うだろう。

しかし、子ども向け作品かと思っていたら性処理ロボットが出てくる時点で、そうではないことが分かる。
未来に何を求めるかによるが、必要な人に必要なものを与える技術があれば、人はそれを求める。
そして用がすめばポイと捨てる人間の残酷性が語られていく。

やがてデイビッドはピノキオの話を知り、海に沈んだ遊園地のピノキオ館を見つける。
ブルー・フェアリーの像を前にし、「どうか僕を人間にしてください」と祈っていると、海中に没した観覧車がデイビッドの乗る乗り物に倒れかかり、動けなくなる。
皮肉を好むキューブリックなら、冷徹な描写を貫き、ここで終わったに違いない。

このまま放置か?残酷な終わり方だと思いきや、唐突に2000年が経過し、人類が滅亡した世界で、最後は宇宙人が登場。
母親に会いたいというデイビッドの一抹の夢を叶えて終わる。
ここはスピルバーグのオリジナルか?と個人的に思っている。
一生懸命分かりやすいエピソードを挿入して、せめて最後に救いを与えようとするスピルバーグのサービス精神が涙ぐましく思える。

「人間の身勝手さ」と「人間には永遠の愛など持てない」ことがロボットの一途さ(プログラム)を通して浮き彫りになる。
誰も幸せにならない恐ろしく哀しい映画だ。
note

note