景

バタフライ・エフェクトの景のネタバレレビュー・内容・結末

バタフライ・エフェクト(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

過去を遡って改変することが出来るという特殊な能力を持つ男の物語で、テンポよく劇的な展開が矢継ぎ早に飛んでくるのもあって飽きずに見れた。幼少期のエピソードは「恐ろしい事件があったけど肝心なところでは記憶が途切れて詳細が分からない」のがずるい展開で先が気になるし、大人になってからは欠けた記憶のピースを埋めるように答え合わせがスムーズに行われていくのも気持ちいい。エヴァンが過去を改変するたびに極端なほどに変わる周囲の状況も面白かった。正直、今見るとエンディングを含めても真新しい要素は何一つないんだけど、真新しい要素がなくても面白い作品はこうして作れるのだなと。

エヴァンという主人公も自分本位なところが面白いキャラクターで、最初はケイリーのことなど忘れてそこらの女とイチャイチャしてたし、ケイリーに会いに行ったのも日記を読み返して気になったからで(要するに会いに行った理由はレニーの時と同じ)、「君を迎えにくる」という約束を守れてないことを後ろめたく思ってるのかと思いきや軽率に過去のことを聞いてたので、マジで忘れてたらしいのが面白すぎた(約束のこともケイリーに言われて初めて思い出したのでは)。ケイリーが自殺したことで過去を遡るようになるけど、これはただの罪滅ぼしと考えた方がしっくり来るんですよね。この最初の改変だけでなくエヴァンが過去を遡る動機は主に自分のためで、それがカルロスを利用するルートでも表れる。

ただ、エヴァンの父親は周囲の人間の人格を変えてしまうことの罪を教えようとしていたけど、あの能力は使う人間の人格にも影響を及ぼすんじゃないか。周囲の変わりようが極端すぎて分かりにくいけど、過去改変後のエヴァンは傲慢になることもあったし、そもそもこうした能力はその人を傲慢にさせてしまうのかもしれない。やっぱり過ぎた能力を持つとロクなことにならんのだなマジで。そして人格に多少の影響があるのなら、エヴァンがケイリーを愛するようになるのも分からなくはないかなと。エヴァンではなく、レニーを愛するケイリーがいたように。

他人を救える気でいた傲慢な自分に気づいてからはエヴァンはより可哀想な目に遭っていくのだけど、最後にケイリーと関わらないことを選択したのはみんなのためでもあるんだろうし、エヴァン自身が疲れていたことも大きいのだろうなと。劇的な変化の繰り返しは辛いだろうし、周囲や自分が不幸になるのを何度も味わうとそりゃ耐えられんよね。正直エヴァンがケイリーを本当に深く愛していたとは今でも思えないけど、それでもラストのすれ違いにはぐっと来た。

しかし周囲のキャラクターの変化は面白かったけど、中でもトミーの変わりようには笑った。なんでそう極端なんだ。何のスイッチが入ったんですか兄さんは。そいやエヴァンとケイリーがいい感じになるとキレていたのは、父親が性的虐待していたことも原因としてありそうなのが何ともな……。あの父親はパイプカットしようそうしよう。
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