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真夜中の虹のrollinのレビュー・感想・評価

真夜中の虹(1988年製作の映画)
5.0
つまり何が言いたいかというと、この先どんなに映像技術が進歩して凄い映画が生まれようとも、『真夜中の虹』はずっと最高であるということ。

人生のどん底に転がり落ちた男、カスリネンの物語は、ケン・ローチ監督やダルデンヌ兄弟と同じ合図でスタートを切りながらも、カウリスマキ監督持ち前のユーモアと小津監督由来の赤い成分に彩られ、実にナンクルナイサーな大人のおとぎ話へと展開していきます。
簡素で淡々としたカメラワーク、板付のショットにクラシカルなモンタージュ、そしてキーワードの如く言葉数少ない演技の中にこそ、豊かな感情表現が溢れてる。

失業しながら幌の壊れたキャデラックに乗り、バツイチで“お荷物”付きのイルメリを口説き、働き口を探す。
音楽は台詞と同等の意味を成し、体裁としてのロックではなく、ロックンロールとは何かということを感じさせる映画。つまりカッコいいとはこういうこと。

ネジを巻き忘れたゲイリー・オールドマンの様にキュートなマッティ・ペロンパーは毎度カウリスマキ作品の華やし、彼を乗せたキャデラックの幌が閉まるまでをフルコーラスでお届けする間の取り方は完璧!

汚ねぇ河岸での昼寝デート、イルメリの左手薬指にはめられた指輪、そして真夜中に見た虹——
あらゆるシーンが体言止めでカットされたポストカードの様に美しい。最も愛する映画のひとつ(便利な言い回し)でございます。
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